現場に向かう電車、途中でとまる駅の東側はるか遠方に甍の並びの美しい集落が一瞬見えるのだが、いつも先頭近くの車両に乗っていたので写真を撮り損ねていた、今日はいったんの最終日となるのでわざと後ろの車両にのって、駅に止まってドアが開くや写真に収めることができた。いずれ現地に立寄ってみたい景観である。
一通り終わって、見回せばすでに棟梁の姿はなかった。棟梁代行の初老の温和な大工クム、補佐役の坊主刈りの親切そうな助っ人さん、手元風の若者、の3人。2人と聞いていたが。早速合板の加工をはじめてもらうが、やりもって何点か質問を受けるのだが、久しぶりの現場、たぶん半年か、で詳細な記憶が飛んでしまっている。その都度、納屋組(事務所愛称)バトに電話して、回答を伝えるが、どうも図面やら標準図が実際の仕事に対応したものではないことがわかってきた。たとえば、合板を実際に張ってみると、どこで切るのか、あるいは図面と同じにならない、あるいは図面に出ていないところでジョイントがあって、受け手が半端など、5、6点はいちいち説明を要するわけだ。現場は、図面に従って動くばかりではなく、出来上がり状況の取り合いを見て実際の疑問が生ずるのである。そこで、今後のことも展望して、現場のツボがわかるメモをつくることにした。題してツボメモ。前日にでも大工さんに読んでもらえるような、語り口のメモで、図面というよりスケッチで補足説明するようなもの。早速、納屋組チアにお願いする。合板梁メモとか胴ぶちメモとか煙突小屋メモとか。
そうこうしているうち、電気屋さんも昨日に引き続き参上。引き続き配線工事。瓦屋モグは直前の現場からの連続再登板。無駄口はたたかずもくもくと一人でやる。もちろん工事上の質問もある。まず瓦桟の先端、防腐処理してある緑色が見えるのでは?早速詳細断面図見ると五分(15ミリ)ほど引っ込んでいるし、樋がくるから見えにくいだろうということでパス。それからが雀口は工事に入っているのか?という。バトに聞くと見積入っていると。社長に連絡すると、スパニッシュS字瓦は普通プラ面戸だが今回は南蛮しっくい詰めなので、左官下地の団子詰めで見積もりはいっています、という説明。なるほど。これは段取りした会社と現場職人との間のコミュニケーション不足から来た質問だが、ツボ押さえていれば難なく答えられた。それから確認事項として大切な瓦の軒先からの始まり寸法、図面では80と書いてある。普通2寸5部だが、まあいいか。
電気屋シニア、なにやらぶつぶつ言いながらドリルをもっている。穴あけにくいですか。「そうや」。ではルート換えましょうか。床下にもどってこの柱から上に行って・・・。電線ルートの現場変更である。しかしこの電線ルートはいつも現場ぶっつけで打ち合わせに入っている。シーダ・バーンは古民家型つくりで、電線の隠れるところが極めて少ないから。やはり事前にある程度図面化しておかなければとも思う。でなければごちゃ混ぜだ。次回以降の課題としよう。
一段落して、いつもの車中事務所の設営。窓とリアドア全開、屋根をシートでくるんで重しの板、仮設ポールの電源入れて、車中に電気引き込みとパソコンのセット。ようやくこれで今日の事務所仕事も腰を据えてできると、時計を見たら11時。次回現場の仮設トイレの業者決定と納品配置の打ち合わせを納屋組マナと。今回は、地盤調査につづきネットで探した地元業者だ。ネットで簡単に決まってしまう業種もあることは確か。いつものことだが昼は車中弁当に車中昼寝。シートで遮熱している暑さ、心地よい汗ばみ方。
(つづく)