シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



見学簿-10H様1-③



10H様の第一回目のご見学記録を、全3回に分けてお送りします。


工事スケジュール、ご要望など

ご主人    工期はだいたい半年ですか?

先生       30~40坪でしたら5ヶ月ですね。製材に1ヶ月、基礎着工から入居まで4~5ヶ月ですね。造園植樹は入居されてからになります。

ご主人    古い家を壊すのも含めて?

先生       そうですね。壊すのはそんなに時間かかりませんから。

ご主人    浄化槽があるんですけど、それは引き抜いた方がいいですか?それとも埋めるんですかね?

先生       場所にもよりますが、通常は取るんじゃないですか?

ご主人    駐車場の下にあります。

先生       昔のやつですか?コンクリートの?

ご主人    1軒目のときはポリタンクにエアレーションのもでしたが。

ご主人    囲炉裏は経費かかりますか?

先生       木の種類にもよりますが

ご主人    縁にだいたい柿の木を使ってます。嫁の父は自分の山の柿をスライスして縁にしてます。そういうのが手に入ればいいですね。

先生       柿の木はお茶室にも使いますね。一番強いですから。

ご主人    燃えないようにして頂ければいいんで。

先生       厚ければ燃えないんですよ。ちょっと勉強しないといけませんね。だいたい適材適所というのが苦手なもんで。床は固くて薄いのがいいといいますが、私は柔らかくて分厚いのでいいですから。でも住み心地は抜群です。本来自然と暮らすのが日本人で、関西の豊かな四季、その毎日の変化を受けて活性してきましたから。今はどのお宅も窓が閉まって下手したらシャッターも閉まってますから。

ご主人    今の人は感性ないですからね、子供の頃は泥だらけになって遊んで、それで家ん中入ってましたから。畳も茶がらで和箒で掃除してましたし。和箒買うて、着々と構想してたんです。古民家の移築はたいへんですし。ログハウスは嫌いなんですよ。

先生       そういう方、男の方でたまにいらっしゃいます。

ご主人    生活をこうしようというのがあるんです。洗面台の実験で使うようなやつ、あれいいですね。下がフラットなやつがいいんです。信楽焼きみたいなん流行ってますけど、ああいうのじゃなくて、バケツとか入れたいんです。

先生       孫のお風呂にもいいですよ。あれは一種類しかないですから。TOTOのものです。昔はホーローのものと二種類ありましたが、それがなくなりました。

              奥様はどうですか?

奥様       ええ、生まれ育った家もこういう感じで。主人の話では不安だったんですけど、実際に見せて頂いて、すごい、いいなあ、と。喧嘩もしたことありました。今日でもうコロっと。

ご主人    29の時に滋賀の家を建てまして、39の時に今の家でしょ、49が来年なんですよ。

先生       私も、29の時に結婚して39の時に独立、49にシーダ・バーンを建てて、59は何かな、と思いましたが何もありませんでした。19に東京の大学に進学して家を出て。もうね、エネルギーが違いますから。次回よければ上の方も見学頂いて。

奥様       もう、すごい興味があります。今、わーっとなってます。

ご主人    水屋はつくってもらえますか?

先生       食器棚とか、だいたいキッチンのバックの仕様は決まってます。オープンなので、ご主人も料理をいっしょにして頂いたり、片付けとか。

ご主人    僕は一切しないんです。大工仕事はたまにします。水槽置く台作ったり。こちょこちょなんかやるのは好きなんです。庭を苔むしにしたいと思ってまして、だけど湿度低くて無理なんです。今の土地は裏に自然の苔があったんで。

先生       西と南、出来たら二棟つなげて渡り廊下がいいですね。それで坪庭ができます。

ご主人    女房の実家がそうです。

先生       ポーチ、土間、離れとか半屋外の場所があるのがいいですね。自分の家から自分の家が見えるのがいいんです。

先生       これは設計の話ですけど、時間がかかります。大きいほど時間がかかります。部屋が増えるにつれ関係性が多様になりますから。1年くらい、これというのが出ない時もありました。設計が命ですから。

ご主人    そうですね。設計は変えられませんからね。

先生       もっとも、建ててからも変えてますけどね。そこも最初はトイレでした。10年間ずっと、どこかしこ変えてます。

ご主人    瓦はどういったものを使いますか?淡路のものですか?

先生       冬寒くないというので淡路のを使っていますが、三州も多いです。

ご主人    土は載せますか?

先生       土は載せません。以前職人さんが土載せしかやらないというのでそうしましたが、土と瓦が密着して空気が流通しないんです。土は熱容量が高いですから、冷めにくい。厚板のほうは自分の感覚で分かってますから。昔の家はどこも土を載せていたでしょう。それで小屋裏に住めなかったんだとも思います。今、モクセン板を下地にして桟瓦の屋根を設計しています。これだと土載せに近くて、瓦との隙間から空気も流れますので。

ご主人    はい。

先生       分厚い板ですと、化粧材もかねてあっという間に施工できます。今年の夏は酷暑でしたから、施工手間がかからないのは助かります。

ご主人    はい。

先生       白い天井にしたい場合は漆喰を塗って。ガレージに瓦屋根、あづまや風にしてもいいですね。こないだのお宅もそうしました。でも2台までですね。4台はちょっと。分けないと。

ご主人    2台は屋根をつけて、あとは子ども帰ってくる時に停めるくらいですから。

先生       伊勢神宮の馬屋みたいな感じですね。

ご主人    風情ありますね。楽しみです。正式にお金支払って土地の契約になります。それで鍵をもらって中に入れます。ものいっぱい残してみたいで。お年寄りですから。

先生       建具が使えるかもしれませんね。

ご主人    はい、使えるもんは使うつもりです。ガラスも透明じゃないやつなんで。

              ライトの吊り下げもいいですね。

先生       飽きませんよ。もうどこにも行かないですから。居心地よくて。マンション住まいだった時は休みのときになるとどっか行こうといって、木造の旅館に泊まりにいったりしてたものです。普茶料理というのがあって、30年前は木造のお寺だったんですが、母親と行ったことがありまして。こないだ家内を連れていってあげようと思って行ったんです。そしたら鉄筋になっててびっくりしましたよ。

ご主人    ネットで古びた木造旅館を見つけて行くんですが、一部だけですね。それだったら、女房の実家の方が囲炉裏もあるし、よほどいいと思います。

先生       阪急甲陽園のところにいい和風の旅館があったんですが、夏は簾戸なんか使ったりして。それが或る時ビニール張ってエアコンになってるんです。案の定、2~3年前に閉館になりましたよ。甲子園ホテルもありましたけれど、ホテルは常に近代的じゃないといけないから、閉館せざるを得ないと。和風旅館だったら近代的にならなくてもよかったのにと思いますけど。

ご主人    まー、夏場はきついですからね。

先生       今の話しは全部余談ですけど、あまり悪口ばかり言ってはいけないかもしれません。

ご主人    ハハ、また今度、二階も見させて頂きたいと思います。

先生       明日から遠方の現場で、ちょっとバタバタするんですが

ご主人    平日はどうなんでしょうか?

先生       近々講義が始まるので、午前中はちょっと都合つきません。まあ、なるべく対応いたしますので。

ご主人    はい、また連絡させて頂きます。楽しみです。

先生       こちらも楽しみにお待ちしています。


(おしまい)

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