10H様の第一回目のご見学記録を、全3回に分けてお送りします。
木枠の窓とネジ締まりがいい。
先生 雑誌ですが、何をご覧になったのですか?
ご主人 ええ、チルチンびととか雑誌は色々見ています。ネットも見さしていただいて、三馬力半にも伺いました。2、3年前から興味を持っていたんですが、まだ土地が決まっていなかったので。ようやく土地を見つけまして、古い家が建っているんですが、それを壊して新しいのを建てようと思っています。
ご主人持参の雑誌:
チルチンびと49
「風の道のある家」
チルチンびと別冊25
「関西・瀬戸内で建てる本物の木の家’09」
雑誌のほか、今度の土地の資料、お好きだと言う囲炉裏の写真など、色々な資料が入ったファイルもお持ちです。
先生 シーダ・バーンの特にどういったところが気になりましたか?
ご主人 木造が好きでして・・。
先生 木造と言っても色々ですが。
ご主人 窓枠が木というのが今はないでしょう、あとネジ締りも。
先生 それはシーダ・バーンの特徴のひとつですね。
ご主人 あと風通しがいいというのも。今は重量鉄骨の家でして。
先生 まあ、内部を見ていただいてと思っています。今の新築の家も12年前からほとんどつくりが変わってないんです。どの方もこの家を見て頂いて、同じようにつくっています。設計に加えて施工管理ももう10年近くなります。
ご主人 岡山の家がありましたね、見た感じがすごいな!と思いました。
今度の家の大きさ
先生 だいたい地方の方は土地が広いので。ここの家の土地もかなり広かったのです。工場と一緒に移転して住んでおられて、まだ空き地があったので増築的にもう1軒建てられたのです。
ご主人 今度の土地はかなり広いのですがでも周りに大きい家が多いから100坪以上あると思えないです。
先生 ここも向こう側のマンションが140坪で、ここが60坪です。
ご主人 今度の土地はど真ん中に古いおうちがあるんです。昭和42年築の。窓がねじ込み式で。
先生 昔の家の名残ですね。
布基礎かベタ基礎か
ご主人 基礎は布基礎ですか?
先生 地盤調査で平米3トン以下だったらベタ基礎、それ以上だったら布基礎というのが基準で決まってるんですよ。ですから良好な地盤であれば布基礎ですね。できるだけ地面をコンクリートで埋めないようにしたいのです。ベタ基礎は施工もらくですし、鉄はそんなに高くないんです。で、地耐力も強いとなると、近頃流行っていますが。
ご主人 ここは布基礎ですか?
先生 いや、ここはベタ基礎です、恥ずかしながら。当時はそこまで信念がなかったですから、えいやっという感じで。
CDABARN MAP
ご主人 シーダ・バーンのような建て方は初めてです。
先生 恵比寿神社もこうなってませんか?酒蔵はこうですよ。
ご主人 子供の頃は恵比寿神社が遊び場でしたけど、今はなかなか入れてくれないですね。
先生 酒蔵とはこういうものです(写真集)これは石川県のもので、シーダ・バーンとはちょっと違いますが、だいたい同じピッチです。シーダ・バーンは神戸、阪神間の文化を受け継いで造っていますから、西欧の雰囲気もあります。
ご主人 この近くでも建てられてますね。
先生 ええ、こういうマップをつくったんですが、
ご主人 たくさんありますね。全国に。
先生 雑誌に載ったもの以外は非公開にしています。プライバシーがありますから。でも意外と近辺は少なかったのですが、最近はまた増えつつあります。お近だと経費が安くなりますね、
ご主人 はい、出張経費がなくなりますね、
先生 遠方の場合は現場管理の費用が影響を受けますね、だいたい50万から100万の間ですが。設計費用はあまり関係しないですが。
ご主人 ここも遠いですね
先生 このときは宿に泊りがけで。遠くの方は、その分本当に真剣に依頼されます。お客様も費用かかりますし、私たちも目に見えない時間を費やします。お互いの信頼関係も強いので、費用をかけた以上のプラスがあるように思います
シーダ・バーンのメンテナンス
ご主人 建て終わったあともメンテとかあるんですかね?
先生 建具ですね、木ですから。湿度によって膨らんだり縮んだりしますから、それもある程度すればおさまり所が見つかってきます。建具以外には特にありませんし、基本的にはメンテナンスに時間を割こうとは思っていません。ご自分たちで工夫してやり過ごして頂きたいので、メンテ部隊はないです。ある程度まとまったお話なら資金とご予定とを伺って、工程を組むというのは出来ます。具合悪いところも含めて、段取りをして改装工事するというような。もちろん緊急の場合は、水漏れとかはすぐに対応します。
ご主人 こないだ三馬力半に行ってきたんです。焼肉屋さんなのにモクセン板のままでもまったくニオイがなくてびっくりしました。女将さんも珪藻土とか漆喰塗る予定だったけどもうこのままでもいいか、なんて言ってました。
先生 壁を塗る場合だいたい新築2~3年経ってから塗ります。杉が乾燥して楔がゆるんできますから、締めなおして。
次の家で三軒目
ご主人 これで家づくりは三軒目になります。建売のものから始まって、昔ながらの木造でしたけど。二軒目は重量鉄骨の家で、今の住宅です。三軒目はもう終の棲家と思ってます。下の子が小さいんですけど、咳が出るんです。それで、山の方へ行ったり。機密の高い家は身体に合わないですね。
先生 メーカーさん、工務店さんにすき間のある家を建てて欲しいと言ったら向こうも困りますよ。考えをまとめるのがたいへんですから。私の設計は誰にも真似できるものではないです。自然素材は割れがあったり、狂ったり、精度が違いますから。今の時代ではなかなか広まらないやり方です。昔は圧倒的に広まっていったのにです。
ご主人 技術的な問題ですか?
先生 大工さんはいるんですよ。若い人もやりたい方多いですよ。宮大工とか数奇屋専門とか今も続いてますし。20年前ですが、自分で和風をやろうと思って建設会社に聞きましたら坪150万というので、びっくりしました。様式をなぞるのがたいへんですね。和風というのは日本人の家なのに高くてできないんです。当初はそれで普通の家を作ってました。普通の家というのは断熱材があったりアルミサッシの家です。でも普通だから、雑誌には載せてもらえないんです。自分の家を建てる機会があってこれを建てたわけですが、周りには随分反対されました。趣味的だ、特別すぎるといわれて。この壁も、モクセン板現してたのを、慌てて塗りました。
ご主人 三馬力も、ニオイがないうえに外の音もそんなに聞こえなくて。
先生 それはモクセン板の吸音性ですね。あと、油がべとっとつかないですから。焼肉屋さんは三件相談に来られました。ここが店やったらいいな、と。
ご主人 柿渋は全部塗られるんですね。
先生 やる人とやらない人といます。柿渋というのは漆の廉価版ですから。色がだんだん落ち着いてきます。檜に比べると杉は赤白が強くて、節も目立ちます。大徳寺の境内に利休のお茶室を真似てつくったものがありますが、柿渋を塗っています。雑木を集めた内装を統一させるためです。
ご主人 この色は落ち着きます。
囲炉裏を持つのが夢
ご主人 妻の実家が築150年の農家なんです。そこに囲炉裏があって、すごく好きで、今回、そういう囲炉裏も考えてるんです。炭のものと燻しのものとあります。(写真を見せていただく)
先生 うちはだいたい薪ストーブです、10万、20万の廉価版ですが、若い人に人気です。冬寒いといわれるので。
ご主人 実際どうなんですか?
先生 寒いのは寒いんですよ。だからどう暖を取るかという話です。薪ストーブなんかいいなあという。
ご主人 火を見てるといいですね。一日中置き火ですか?
先生 ストーブのグレードにもよりますが、寒冷地ではないのでだいたい朝と夜焚きます。阪神間はもともと置き火という文化がないですから。どっちかと言うと火鉢です。ただ火鉢は灰が舞いますから。嫌がられましたよ。
ご主人 ええ。
先生 若い人で薪ストーブがいいという方が多くて、それでシーダ・バーンも急遽入れたわけです。最近、一階からの煙突に二階でもう1台つなげました。猫も薪ストーブが一番良いって知ってますよ。冬になると陣取ってます。じわ~っと暖かくて、音しないし。エアコンが一番うるさいですね。あとガスストーブも。
ご主人 皆さんエアコンは入れられるんですか?
先生 和室、寝室など休む部屋に、お勧めします。受験とかあっても子供部屋は問題あります。ダイニングなど元気な空間にはつけません。今年は暑かったですから、うちも寝室だけ、夜つけてました。
(②につづく。次回、シーダ・バーンご見学の様子です。)