シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



現場速報-10Z邸1日目午後、業者探し



主な登場人物

  • オヤジ :基礎屋の社長兼親方。口も手も動きが速い。
  • スケさん:鉄筋屋。
  • デカ  :地元の大工棟梁。この現場では内装工事をお願いした。
  • サイ  :電気屋。


訪問先の建設会社に車をつける。1時きっかり、ごめんくださいと入り口を入ると、若くて愛想のいい方が迎えてくださった。会長さんはと伺うと今出かけたばかりで、まぁどうぞ中へ。名刺交換すると会長の息子さん、社長でした。つまらんもんですが、と山口のSAで買った名産菓子を渡すと、「先生ですか?」と聞いてくる。現場のほうに来られるのはてっきり所員さんだろうと思ってました。いやいや所員は後方援護で私が先兵でやってますというと、関心することしきり。早速用件で恐縮ですが、会長さんにお願いしていた大工さんのことなんです。「はいはい。私が先日送っていただいた資料見さしてもらっていますが、一度詳しくお聞きしたいと思ってました。」あぁ、このコピー、色が濃いですね。「ええ、なんか重厚というか、」いやこちらの本で元の写真ご覧ください。「はいはい、よく雰囲気わかります。」すいませんでした。伺っている話では、大工さんを3人ほど確保していただいているということですが、「それなんですが、うちの会社が頼んでいる棟梁が上棟と重なってどうしても体が空かないんです。こんな建物ならやってみたいとは言っているんですが、それで、いつも応援で来てもらっている大工さんが3人いるということで。」どのくらいの年代の方ですか。「65までの年配の方です。」そうですか。もしほかの棟梁さんなりと一緒に仕事していただいても問題ないですね。「おとなしい方たちばかりですから、大丈夫です。」常用でお願いするとして、人工賃いかほどでしょうか?「うちはいつもこの金額でで来てもらっているんです。」そうですか。税込みですね。一度お会いしたほうがよろしいでしょうね。今日明日居ますので、また連絡するということで、よろしくお願いします。・・・などと会話が進み大枠話の中身が把握できた。

現場に戻り樋工事どうなったかチアに電話すると、もう手直しして問題解決とのこと。朝の雨のせいか日差しはあるが風がやさしい昼下がり。軽トラ2台が現場着。先の1台はオヤジ。その後ろに大工さんと思われる1台が着いた。プロシードからでて挨拶に行く。棟梁(後にデカと命名)と電気屋(後にサイと命名)。名刺を見ると二人とも自営業だよ、わるくない。「芦屋って県名ないな。近くの芦屋と違うのか。兵庫県か。」オヤジによると自分に輪をかけてしゃべるときいたが、オヤジとデカ二人で最初から突っ込み激しく。しっかりした体に日焼けした顔、節くれだった手指。気を引きしめて、ざっと建物の写真を見せて説明。すでに応援大工が3人いるのだが、ジョイントでやってもらえませんか、と言ったことが、文字通り口火となって火が付いた。「その応援大工てなんじゃ。工事というものはな、請け負うて初めて責任がもてるのじゃ。な、常用で来とったら、責任は誰がとるんじゃ。そうやろ。腕が悪くたってもらうもんはしっかりもらうけん。暇だから来とって、もっとほかに都合ええ仕事ありゃ、ふっと移って行きよるで。棟梁がおって手下の大工がおったらそんなことはさせん。びしっと躾がきいとるから、後片付けかてきちんとして帰りよる。それが違う大工がおってみいな。現場がばらばらになってしまいよるで。設計士さんの仕事とかて、すぐ変更しよるじゃろ。それでも言われたことはやらなあかんのは、請け負うてるからじゃ。いやんなったから、もうやめさしてもらいますとは言えんじゃろ。あんたかて、遠方から来てるんやから、半端な仕事されてしもたら困るのと違うか。ここらで、きちっと大工抱えてやってるところといえば、三つ四つしかない。誰といわれればすぐばれてしまうような場所柄じゃ。そこんとこちょっと行った金物屋に聞いたらわかる。腕のある大工が誰かすぐわかる。(オヤジ)「わしも紹介するからには一流の大工しか紹介せん。わしもさっきから、その話おかしいなと思って聞いてた。」(電気屋サイ)「棟梁が仕事受けなんだらわしも辞退しとくわ。」「そんなことない。あんたは、あんたで値段おうたら仕事したらええがな。遠慮することない。」「いやいやワシだけではうけられんな」・・などと3人で大いに盛り上がっている。はい、これまで大工さんにはそういう方がおられて、途中で別の現場に行ってしまわれたり、手が遅くてこちらからお断りしたり、現場の途中で苦労もかさねてきたので、筋が通っているお話でよくわかります。応援大工の件はもう一度考え直してみます。この写真、私の家なんですが見てください。木裏が床上になったり、大工さんがいい加減だったんです。「わしなら全部やり直させるで。」それに材木の乾燥が不十分で床材がすいたり反ったりであばれているでしょう。ところがです、お客さんにとっては反対にそれが魅力なんです。いつになったら反るんですか、すくんですかなどと。「そうか、あまりきっちりつくったらいかんのじゃ。ようするに納屋やろう。」そうなんです、ここにのってるように杉の納屋なんです。「わかるわかる。店舗の内装やなんかでこんな感じでやることあったけん。そういうのが若いのは好みじゃけん。」ですから、大工さんもピンきりだったですが、こんなつくりだと思ってなんとかここまで来れたんです。「さっきからちらっと図面見てるけど、ざっと450人工はかかるだろう。」いえ、そないはかかりません。300人工ぐらいです。「上棟までは別の大工がやってくるらしい。」「そうか、それも変わったことじゃな。」屋根仕舞いからお願いする予定ですが。「垂木かけたりからか?」いえ、母屋に厚板張るだけです。こんな感じで。「間違いあったらどうするんじゃ。」いや、何十件もやってる棟梁なので間違いほとんどないし、あっても建て方ダメ工事として数人工分見てますから構いません。それと、今回はこういう形ですけど、次の仕事来ますからそのときは墨付けからお願いしたいんです。「そうじゃ、これで仕舞いというわけにはすまんけん。」はい、是非次回から。「デカさんところは、そうすると棟梁が忙しいときは代わりの棟梁級の方が来られるわけですか?」11月から3月くらいまで5人工くらいいかがでしょうか。「うちは何人でも構わん。やりくりしていったらいいし。わしがやってもええがな。」すいません、私の言うことは聞いてくれますか。もちろん言うこと聞く。「この本よく見てみるわ、持っていっても構わんか。」どうぞどうぞ。「棟梁のとこは、人工賃、大工分と手元分とか分けて出すんですか。」オヤジ、「デカのところはみんないっしょじゃな。」見積依頼お出ししますからお幾らぐらいかお願いします。「あんたのほうから幾らかいってくれたら考えるし。」いや、原則まずはそちらから値段出してもらってます。そうでないと、納得いく額がわからなくなりますから。「値段違って相談も何もなしで判断されるのも困る。だいたい、値段安いところはそれなりの腕しか持っておらんのじゃ。」オヤジ、「デカから値段出したらいいじゃろ。」図面と見積もり依頼書郵送しますので、「また次来たときでもええじゃろ。そんとき決めたら。」よろしくお願いします。「そろそろ帰ろか。見てみい、今もサッシ取り外してきたところじゃ。」お忙しいところわざわざありがとうございました。「仕事決まったら、オヤジと飯でも食いに行こうか。」え、誰とですか?「先生とじゃがな。」いや、すいません。私はそういうの遠慮してるんです。「それも変じゃな。仲良くしたくないのか。」仕事上では仲良くしたいけれど、その時間外はちょっと。「変わっとるな。」すでに時間は4時過ぎ、ちょっとした嵐に遭遇した感じで。久しぶりの説教調にどうなるかと思ったが、食いついてきてくれたので一安心。あとは人工賃いかほどかが課題として残った感じ。自営だしこの社長、ほんとに大工集団率いているのかも。

一方、建て方墨付けの方も進んでいて、マナ経由での詳細の質疑を処理。今日は1日いろんなことがあって、しかも車中泊なのに意外と疲れはそれほどでも。朝方の雨が猛暑をやわらげてくれたせいかも。5時現場退場。


すぐに、宿に到着。部屋で一服お茶して、先ほど伺った建設会社に電話。昼過ぎうかがった者です。いろいろお世話かけましてありがとうございます。それで、ご紹介の大工さんのことですが、今しばらく考えたいので、今日明日にでもお会いするとかいうお話は保留にさせて頂きたいのですがよろしくお願いします。「そうですか。わっかりました。またの連絡お待ちしています。」これで一安心。