シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



見学簿-10G様②



10G様ご見学の様子を3回に分けて配信いたします。




吹き抜けがいいなという家

奥様    展示場の住宅は真ん中が全部吹き抜けになっていて、その周りが子ども部屋なんです。完全に孤立させずに吹き抜けを囲んだ2階になっています。子どもの足音が聞こえるつくりで、そういうのはいいな、と思いました。
先生    それはこういうことですか。



奥様    あっ、そうです。

先生    この案は多少疑問にも思います。私なら、こうしますよ。この真ん中部分というのは小屋裏の天井が高くとれて一番良い場所ですから。家自体は普通の平屋に見えますし、ローコストになりますから。厚い床板1枚の部屋です。何かしていれば音が伝わりますが、上でお子さんが静かだったら寝てるか、何か悪いことしてるかのどっちかですから、すぐ分かります。吹き抜けがあって見えるとかじゃなくて、そういうコミュニケーションの仕方ですね。先ほどのプランはとてもリッチなプランです。目に付くようにやっています。視覚的に分かりやすいですから。設計者が考えた特殊な家です。ファンとか、照明とか付いてるんでしょうね。?

奥様    ええ、ファンが付いてました。こういうプランは考えたことがないので面白いですね。

先生    家は人が暮らして活きてくるものです。暮らしていないけれど、ピカピカの新築ものをみせるのがハウスメーカーです。先ほどの例というより、シーダ・バーンではこういう形の家が多いです。はじめは2階建て、お金に余裕があれば平屋増築するというイメージで、片流れ風の外観が多いんです。実際にアメリカの開拓者の家はそうした理由による外観の家が多く、これをソルトボックス・タイプと呼んでいます。塩を入れる箱に似ているからだそうですよ。シーダ・バーンの家って、和風ばかりでなく洋風を感じるのはそういったこともあるかと思っています。シーダ・バーンの柱は6寸、18×18センチです。こういう太い柱で造られてるお宅はあまりない。全部杉です。節もあるし、くるったり、割れたりしますが、ローコストの民家型、自然住宅となれば使わざるを得ない。私の場合は杉材が安いというところから入りましたが、材を大きくとれば強度もとれますから、安いだけではないんです。赤味材も良いですよ、水周りや土台などに。昔からいいものを受け継いでいるだけですから、それが売りというわけではないです。誰も使わない自然材を使っていこうというのも、私のひとつのコンセプトです。
       
        ものの良さというのは見た目も大事ですが、目を閉じたときのことが一番大事だと私は思っています。嗅覚、触覚そういうのが大事。猫ちゃんもそうです。気持ち良い場所が感覚的に分かりますから。それは人間にも言えることですよ。自然と一体になりながら暮らす、暑さ寒さは当たり前ですから。今はエコといっても24時間換気でしょう。でも分かる人には分かるんです。木の窓とかを見て。うちは気密性を追い求めてないですから木の窓になるわけで、決して贅沢だから使っているわけじゃない。

(息子さん、寝てしまわれる。)

奥様    すいません・・・今日ちょっと早めに来たんですが、道に迷ってしまって、暑い中たくさん歩いたので疲れたみたいです・・・。
        先生のホームページ見ましたが、ネットで見せてもらったものと違う感じで素敵ですね。先ほどの先生のプラン、今まで発想がなかったです、何か写真があれば見せていただけますか?(ニューハウス200510月号、20065月号をお見せする)

(娘さん、ノートを取り出してお絵かきを始める)

奥様    あ、この雑誌ですね。私が見た雑誌は。

先生            シーダ・バーンはモクセン板を使います。これで湿気、保温もします。床板はこれです。
小屋裏は日本では熱がこもると思われていてあまり居室として使われてきていませんが、海外では部屋としても使われてきました。費用のない若い方は部屋にも合理性を求めますから、日本の家でも小屋裏部屋もとればいいのです。
       
奥様    床板の表面と中と色がちがいますが、どうしてですか?

先生    これは表面に柿渋を塗ってます。杉材は白太と赤味が混じったある意味不ぞろいの色合いなので、柿渋で色を合わせてます。

奥様    FK邸ともストーブを使われていますが暖かいですか?

先生    見た目もそうですが、輻射熱ですから、じわっとあったかいです。石油ストーブともエアコンともちがいますね。寒さに身体は慣れるもんなんです。冷え込む場合と蒸し暑さの場合にどう対処するかですね。機械ではなく、土や軒の出、水まきとか、そういう方法を使って、対処します。人為的にそういうことをやったらエコだとか、地球にやさしいという考え方もありますが。何とかソーラーもそうですね。ご存知ですか?

奥様    ええ。

先生    空気を使用して、熱に換えるという。空気というのは本来吸うもの、感じるものです。その日によってちがいます。空気が流れて音・香りを運んできてくれたり。そういうのを五感で感じることが大事です。単に空気をものとして熱のために使うというのはある種合理的なのですが。冬でも風通しは多少必要です。一方で夏はたくさん風を通すという、1年中風が通っていることが大切です。

奥様    F邸のお宅は2階部分は間仕切りがなくスコーンと抜けてる感じですか?

先生    ええ、そうなんです。風呂屋の2階みたいでしょう?

奥様    入り口もおしゃれですねえ。なかなか入り口までこんな、ないですよね。

先生    いや、ほんとないですから。日本では。

奥様    この足元のはなんですか?

先生    ワンちゃんの出入口ですね。

奥様    色々みせてもらいましたが、細かいところの木のつくりがかわいいなと。

先生    K邸の洗面の部分は奥様のセルフです。木を組むところ。これだけは経験のある人にお願いして、そのあとは自分でも大丈夫です。あまり完成させた家をつくらないという一例です。仕切りもあまりつくりません。このように、最初に溝だけ掘っておくんです。必要になったら建具を追加できますから。

奥様    薪ストーブ、主人の前の会社で扱っていて良いなあ、と思ってました。

先生    展示場にはストーブも置いてありますか?

奥様    あまりないですね。

先生    ガス、電気屋さんの対抗商品ですから宣伝も限られています。本当はすごく良いものなんですが、手間がかかるということもあります。では少し見学なさいますか。


につづく)




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