シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



現場速報-10Y邸9日目午後、上棟式


14時過ぎに屋根仕舞すべて終了。引き続いてようやく柱建て。チアが手伝い兼見学に来てくれた。駅で買い物を頼んだ奉献酒、小瓶に、小さく熨斗が付いている。その瓶のかわいらしさにさすがに怒る気もせず、近くの酒屋で1升瓶に買いなおしましょうと。そうこうするうち10Yさんご家族、双方のお母さん、計5人参集して、16時上棟式。式次第は、棟梁に50角杉材の棟札に、必要事項すなわち表に「上棟式・施主○○・棟梁○○」を、裏に「平成22年○月○日」を書き込んでもらい、榊をしばり献酒をそえて、ベニヤと材木で簡単な祭壇をつくる。「本日は10Y邸上棟式の運びとなり、皆様におきましてはご多忙の下り遠路ご足労くださいましてありがとうございます。ただいまより簡単な上棟の儀を行いますので、よろしくお願いします。 まずは神様をお呼びするのに、棟札に向かって2礼2拍1礼お願いします。」「ありがとうございます。」

つづきまして四方より清抜いをさせていただきます。棟梁は塩を、私が米を、お施主様お神酒をもって東南西北まわりま す。」「清抜い滞りなく終了しました。では神様お送りしますので、再度2礼2拍1礼お願いします。」「ありがとうございました。これで無事上棟の儀を終えることができました。10Yさま、ご一同さま、無事上棟しましておめでとうございます。本来なら、ここで乾杯の上、お神酒を頂くこと、そして直会(なおらい)といってご一緒に飲み食いさせて頂きたいのですが、昨今の交通事情により省かせていただきます。私から一言御礼の気持ちお伝えします。今まで何度も建て方工事をお願いしてきましたが、今回特に酷暑の中にもかかわらず段取りよく上棟にいたりましたこと、ひとえに棟梁以下大工さんたちの卓越した技量によるものと感謝しています。またその後の屋根仕舞でも同様に厳しい暑さの中、多少手間はかかりますが、野地から化粧までを終えることができたことは、まさしくシーダ・バーンの簡素な施工法の賜物と思っています。工事はこれからもまだまだ続きますが、10Y様のご健勝と工事に携わる方々の安全を祈念しております。それではお施主様よりお言葉をいただきます。ご主人「私が・・・ですか。なにをしゃべったらいいか?」と建物内部を見回して。「念願だったのよね・・。」とお母様。「・・今後ともよろしくお願いします。」「ありがとうございました。それでは棟梁にはご祝儀とお土産をご用意されましたのでお受け取りください。」「ありがとうございます」「道中お気をつけてお帰りください。10Y様ありがとうございました。」という流れでした。

いままでの地域や専門工務店などで行われてきた上棟式のハレの演出などは及びもつかないが、シーダ・バーンにはふさわしい簡素で静かなかたちもあるのではと思っている。ひいては施工管理も同様のような気がする。現場に入る職人はいつもの慣れた仲間、親しい関係が必要だからこそ地域の元請工務店が中心に欠かせないのだ、下請け業者(協力業者)の親睦会や慰安旅行なども欠かせないという。一方、分離発注だとしても施主の代理たる私が現場に付き添うことで施工の原点に近づくような形になれば、それぞれの職人がお互い心底では通い合う心が生まれ、他者を気にしながらももくもくと仕事をする、それだけでも十分な気がする。

式次第はともかく、決して好景気とはいえないこのご時勢で、家作りの仕事を依頼されてくださる施主が居て、また長年研鑽を重ね腕を磨かれてきた棟梁以下の大工さんたち、また工事全体の中で、これからも参入してくれる専門職人さんたちが居て、と私の周りにたくさんの方々が集まってきて家作りが進む。設計のみならず施工までかかわらせてもらえるからこその建築家名利に尽きるということか。10Yさんからお土産など頂きお礼。そして、給湯器の話題に。エコジョーズ年間1万円得して、補助金も2万円でるらしい、と10Yさん。「でもお湯炊きと言われましたが、追い炊きのことでしょうから、やはりイニシャルにコストがかかる。10万円ほど。全体予算厳しいのだから、留意してほしい。予算増額を具体的に示してくれるのなら、構いませんが。いくら補助金だといわれても、もともとよいものだったら補助金なくても売れるものなのに。古いお湯を循環するより新鮮なお湯を足すほうが気持ちよくありませんか」、と直球勝負にいったら奥さん共々、高温差し湯がいいです、という結論もらう。これ以上長居するのも何だから早々に退場。チアと駅前で車と荷物の整理、お茶を一服して17時半の電車に乗り込む。

(つづく)

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