シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



第2回講義録111005


皆さんこんにちは。今日は当方の手違いで開始時間にてこずってしまいました。お待たせしましたが、次からはきちんとはじめます。



イントロ
ではイントロから。今日は今西錦司という学者のポナペ島での体験を読んでみましょう。では、
チアさん読んでください。


今西錦司『ダーウィン論:土着思想からのレジスタンス』中公新書、1977年、pp115-116より抜粋
 われわれはそのときポナペ島の山中にいた。熱帯は日の暮れるのが、じつに早い。暮れたかと思ったとたんにもうまっくらである。だから暮れぬうちに泊まり場を整備しておく必要があった。その日も暮れ近くなってその日の泊まり場についたのだが、そこは泊まり場といってもなんの施設もほどこしてはなかった。われわれもまたわれわれの流儀として、テントなど持ち歩いてはいないのである。ふた晩は岩小屋に宿ったが、今晩は久しぶりにゴロ寝か、などと思っていたのである。そのとき突然われわれのつれていった島民たちが行動をおこした。われわれは島民のなかの一人、カテルシャンという男を、ポーター頭のように取り扱っていたけれど、この男は島民とわれわれのあいだのレエゾンをつとめるだけで、こういうときに島民の指揮をとるということはなかった。彼自身も無言のままで、ほかの島民と同じように森の中へその姿を消したのである。やがてある島民は小屋の柱につかう木を、他の島民は高床の小屋の床にはる竹を、またある島民は炊事用のたきぎを、といったように、それぞれに手別けしたものを持ちかえり、あっという間に、ひと晩だけ使うには惜しいような立派な小屋を建ててしまった。さらに驚いたことは、そうして持ってかえった材料に、過不足がすこしもなかった、ということである。
 同じメンバーで、よほどまえから何遍も練習しておいたことならいざしらず、できあいのメンバーで無言のままこうも巧くことが運ぶとは、どうしてであろうか。なにか相手のおかれている立場とか、なにをしようとしているのかという相手の意図とかいったものが、同種の個体のあいだでは直観的に把握されるのであるまいか。以心伝心という言葉もあるが、そういうことは、あるいは同種の個体なればこそ、うまくできるのであるかもしれない。そこにわれわれはまた、言語の生まれる以前の人問生活にたいする、理解のいとぐちを見いだすことができるかもしれない。

(読後)

それで、今西先生は京都大学で自然学という学問を唱えたのですが、その元となったのが加茂川のカゲロウという虫の棲息観察からだったんです。いわゆる棲み分け理論です。当時、今でもそうかもしれませんが、ダーウィンという学者の進化論、これは適者生存とか弱肉強食のような、生物間の優れたものが残っていって高等なものに進化していくという理論ですが、それに反抗して棲み分けは生物がお互い、領分、縄張りを守って仲良く共存していくという思想でした。あまりに、ロマンのある話で学界での支持は大勢にはならなかったと思います。その考えで進化を読み解くきっかけに、かげろうの他このポナペ島のような体験もあるのでしょう。徐々に、強いものが選ばれていくのではなく、あるとき一斉にしめしあわせて変化の行動、進化を起こしたのだというものです。同じような赤ちゃんが一斉にしゃべったり、立ち上がったりするような・・。少し、難しいかもしれませんが、自然の摂理といったものかもしれません。

ポナペ島の話しは現代においても、仮とはいえ小屋のようなものをつくるのに、監督も、もちろん設計者も、リーダーたるものがいなくても自然と施工が進んでしまうという世界がまだ残っていたということです。大昔の建築なら図面や工程表がなくても立派な伽藍ができたわけで、このような建築方法にはとても後戻りしてまねることの出来ないものです。でも、わたしは、言葉や図面がなくとも住宅が立ち上がっていく世界を理想としたいのです。現場に詰めるといいましたが、出来るだけ職人と一緒に居ることで、ものつくりの気持ちを感じたいということもあります。ハプニングなどがあれば会話もするでしょうが、普段は前もって図面や段取りがいきわたっていますから、静かに穏やかに仕事が進んでいくのです。そのあたりは、設計事務所が施工まで考えながら、メールやカメラや携帯での伝達手段を駆使していることが大きいのでしょう。住宅で、木造で、伝統工法で、設計施工で、というやりかたを限定していることも、伝達の簡素化に寄与しているかもしれません。以前は、斬新なデザインで、工事の詳細まで知らず、現場で顔を突き合わせて、ああしたい、こうしてくださいなどとやっていたので、今とは大違いです。日本文化の伝統の延長線上で建築をつくって行くやり方は、少しはポナペ島にならっているのかもしれません。




テーマ
次にテーマ(スライド)の紹介に移ります。前回は水盛遣り方を経て地盤改良まで終わりました。今回は基礎工事の実質初日、掘り方からです。掘り方って普段使わない言葉ですが、業界通用語です。掘削とか根伐り(根切り)とも言います。前回の杭工事とも共通して、地面をつくっていくという意味で、これらを地業と教科書には記述ありますが、私の廻りでは一度も実際には会話されていません。

初日はやはり早く来たかったのですが、遠方からの車の分8時過ぎになってしまいました。既に3人が現場入りしています。親方のカイ、手下のドロにユンボを振り回すケンです。ユンボ・・前回とは違うものですが、また登場しました。この機械は基礎工事の現場の主役なんです・・ですが、教科書などにはその名前はありません。だから多分ほとんどの学生はこのあたりで機械覚えがつまづくのですね。パワーショベル、ブルドーザーが一体となった小型の機械をユンボと呼んで、これは住宅程度の現場なら絶対登場するものなのです。ユンボ、実は商品名ですから教科書に載らないんです。使わない言葉が跋扈したり、施工についてのアカデミズムの無関心が私の学生時代から少なくとも40年続いているわけです。皆さん町の現場を覗いてみてください。どの現場にブルドーザーだけ、パワーショベルだけなんて所があるでしょうか?

掘り出した土は、敷地が狭い場合、場外搬出といってダンプで外に出します。ドロが掘り方の底のレベルをバカ定規に受光センサーつけて確認していきます。レーザーは奥のさわらない場所で回転しています。手前に段差がありますが奥のほうは布堀ですね。細長くといっても、幅60センチくらいで掘っていく場合、布堀りと言います。そういう基礎は布基礎。全体に薄く掘っていくとベタ基礎と呼びます。この二つが現在の基礎の方式ですね。一長一短があって、どっちかというとベタが多くなってきていますが、布基礎を好む(私もそうですが)人や設計者もいます。

砕石とランマー
カイがダンプで最寄りの捨て場に土を捨てて(買い取ってもらって)戻ってくると、砂利がつんであります。これはクラッシャーランという砕石ですが、これも教科書には載っていません。教科書では割栗石と呼ばれるものに相当します。割栗の場合比較的大きくなるので、丁寧に石の隙間を埋めるように置いていくのですが、クラッシャーランはばら撒いて、ランマーという転圧機械で締めていきます。ほとんどの現場ではこのやりかたです。土の搬出は何回も繰り返します。現場立ち会っている場合はその回数を覚えて書き留めておきます。今回は特に場外搬出の見積もりが、実数精算となっていましたので特に。あとで15トン搬出と請求が出ていました。確か6回だったよね、と言うとそうですと。ところでダンプは2トンでしたか?いや3トンなんです。そうか、だから2.5トンの6×なんだと納得でした。想定より多かったのですが。確かに深基礎など人が入れるように図面以上に掘っていました。このあたりが、この会社のうまいところで、掘削量を後出しで条件付けた意味があるのですね。実際かかったんだからしょうがないわけですが、しっかりと請求されました。

その後、スラブ(床版)部分をビニールシートで覆います。これは湿気があがってこないのと、コンクリートがクラッシャーの隙間に無駄に入らないようにするためです。午前中にこの作業が終わりました。






午後一で捨てコンクリート打ちです。通称捨てコンです。しっかり墨出しや型枠設置が出来るようにする敷き台のようなもので構造は期待されないものです。あれ、ドロがいなくなっています。ミキサー車が現場横に乗り付けました。女性の運転手兼コンクリートサプライ作業員です。




今回はケンがユンボのショベルで受けてカイのネコ車、へんな呼び方ですが一輪車に移します。カイは走って奥のほうからコンクリートを流し込んでいます。それにしても、ドロがいないので忙しそうです。他の現場に行ったようです。カイはだんだん手前のほうに流し込んできました。すると、突然ネコ車を捨てて奥のほうに(私は奥に居たので手前に)走り出しました。よくみると、片手にレーザー受信機付のバカ定規、しゃがんで金コテで表面を押さえ始めました。ドロの役割を兼ねて一人二役です。なんと、後ずさりしながらゴム長靴の両足でコンクリートの量のばらつきを調整しながらなのです。その間、ケンは手前の深基礎のあたりにショベルで直接流し込んでいます。


コンクリート流し込み終わって、ミキサー車は掃除にかかり、ケンはユンボを下りて深いところのコンクリートのばらつき調整してから、カイの補助に廻りました。作業が終わり、ユンボはこれで一旦退場です。ホースで道路の汚れをとって、用意したコーンを置いて、お疲れ様でした。今日1日は、掘り方、捨てコンと前段階の工事ですが、何も言うことがないほど一所懸命であればコストも安くなるはずですね。


現場の終わりを確認して、帰りがけに月極めガレージ探しをしました。最初のガレージは断られましたが、少し奥の住宅街に個人名のところを発見。不動産屋さん仲介ありません。たまたま、いい人でした。即決でそのまま置いていっていいということになりました。駅から遠いかなと思っていたら、実は裏側にも人通りの少ない出入り口あって、意外と近いのでびっくり。あまり、事前に調べなくて無心で探って幸運にめぐり合う典型例ですね。感謝感謝でした。


翌々日、1日空けて今日は墨出しと型枠建て込みの予定です。朝、8時過ぎ電車で到着。まだ誰も来ていませんが、なんと墨出しが終わっています。あとでカイに聞くと、昨日時間が出来たので、現場入りましたと・・。管理者の立場では安全や近隣の関係上勝手に現場出入りは困るのですが、今度から事前に連絡だけは頂戴というしかありません。相手は、効率優先で動きたい気持ちよくわかるので。






1時間程してドロだけ1人登場。深い基礎部分の合板を建て込んでいきます。黄色は打ち放し仕上げ用です。昼からはその合板に沿って鉄筋を組んでいきます。すべて1人です。私といえば、最初が肝心なので大枠の位置など勘違いがないか見張っていますが、車の中で別の計画のスケッチなどをしています。15時半になって、ドロは帰り支度。ちょっと早いですが他の現場に向かうとのこと。請負工事の場合は、作業時間は工事人の自由なところもあります。


1日置いて、朝8時過ぎ現場着。今朝はカイとケンがドロの作業を引き継ぐようです。とにかく、シャイなのか面倒くさいのか電話連絡来ないので、現場立ち会うしかないのですね。配筋・・鉄筋を組むことですが、配筋を2人で急ぎます。


配筋チェック


こちらも、もうここで思わぬことにならないよう、コンベックスとレーザーで位置や鉄筋の組み方をチェックします。鉄筋はピッチ、定着長さ、かぶり厚さ、フックの向き、サイコロの高さ確保などチェックします。サイコロは地面と鉄筋を離してかぶり厚を確保するもので、三辺寸法の違うものありますから、ここはしっかり60ミリとっているかの確認。2人作業で午前中で終わりました。今回のように、効率優先で現場を渡り歩かれる工事屋は初めてかなぁ。立会い管理のしにくい面がでてきますが、現場で他の計画のスケッチなどももやっていますから、その影響が大というわけでもないんです。

時間に余裕があったので、近くの信用金庫の建物を訪問することに。なんとこの建物、修行時代の25年ほど前に設計と施工監理した建物でした。久しぶりに再会して、当時の記憶が甦りました。写真を撮っていると、奥の事務スペースから睨まれましたので、外へでると追いかけてこられました。事情を話したら、一転笑顔に。きっちり名刺交換して別れました。



また1日置いて、今朝は深基礎のコンクリート打ち、午前9時からと聞いていましたから、8時半到着です。すでに、ポンプ車と操作者バプが待機準備しています。今回カイとドロ2人です。到着するなり、カイが電気お隣にでも借りてくれませんかと言われ、またハプニングです。そんなん急に言われても何でですか?この、長いバイブレータは深基礎用なんですが、いつもの基礎用は短くて充電式なんですが、これって普段使わないんで、電源要るんですよ。明日になったら電気引き込みあるんですけれど、今までコン打ちで電気要るなんていわれたことないですよ。だいたい発電機持ってないんですか?借りなあかんのですよ。いつも元請さんが電気用意してくれるんで。堂々巡りだ。ええぃ、確か北隣の人は、施主さんも親しくしておられたし、地鎮祭のとき会ってるから、頼み込んでみようと。結果オーラーイでした。




9時、ミキサー車登場。バプがホースもって流し込み、カイがバイブレーターを差し込み、ドロが型枠を叩くという役回り。ドロが固定パイプの調整手間取り、叩きが不十分に見えたが、後でリカバー。カイもバイブを2度かけて、これならくまなく充填されるだろうと感じました。





9時半終了。慌てて、コンビニに隣家へのお礼品買いに走る。でも、コンビニって気の利いたものないなぁなんて迷っていたら、なんとBMDのカステラ発見。これ体裁よく包んでください。隣家の方にお礼を言って、カステラ差し上げた。緊急だが、ここまでが現場管理の仕事。設計作業とは大違いですね。でも一安心です。ミキサー車、ポンプ車、カイの順に退場。ドロが一人残って一般部分の型枠作りに。このあたりの作業は、付きっ切りでなくとも大丈夫と判断して、11時前私も帰路につくことに。今回はここまでです。






サビ
さて、次にサビに移ります。現場管理する様子をお伝えしましたが、こういう工事が実現するまでに、実はたくさんの施工の仕事があるんですね。そのまあ、デスクワークとはどんなものか、ここでお話したいと思います。

まず基礎工事にどれだけお金をかけられるのかという判断ですね。これは、過去の同規模の住宅の基礎工事の実績から参照するのが手っ取り早いです。その住宅の基礎工事の配分を、分け前がそれでいいかを確認しておきます。つまり、基本設計のときから試算表というのをつくって、基礎工事もあたりがついているわけです。さて、基礎設計図ができると、今度は拾いという作業に移ります。予算配分は希望、拾いは現実となります。


基礎拾い
図面の基本断面に注目。捨てコンの両脇余分をとって、台形に土堀りの断面がかけます。この面積に、基礎伏せ図から長さを測って体積、㎥数を出すのです。同様な作業で断面×長さでコンクリート、鉄筋、型枠などの量を算出、流通している標準的な単価をかけて金額がでます。希望と現実合えばオーケーです。合わなければ、どこが不具合なのか設計なのか、規模なのか、ややこしくなります。


仕事をはじめた初期はややこしいの連続ですが、510年と経験するにつれて狙いは定まってきます。ところで、この拾いは実施設計段階でしょうか、それとも施工管理段階でしょうか?一般に設計事務所は拾いを遣りたがりませんし、実施設計終われば相見積もりといって2,3の施工会社に見積依頼するのが普通とされています。でも、おかしいんですね。自分の工事費に対する確認作業がないのに、どうやって相手の評価が出来るんですか。相対比較すれば、どこが適正かぐらいは判断できるよと言われそうですが、とにかく自分の適正値をもっているならまとめておくに越したことはないんです。私は、この拾い作業をするべきだし、この作業は実施設計に入るとしています。その設計が十分現実化されるという保証ですから。最近はエクセル図というものを作って拾いをしています。見積もりだしてみたら、どの会社もオーバーで設計変更余儀なくされた、政治的決着で予算内に押さえ込むというやり方をするなど、本論から外れた行為です。

さて、施工段階は業者選びからです。いくら自分で予算があるといっても、その値段内にやってくれる工事業者がいなければ意味ないです。通常、事務所の近辺の工事ならいつも懇意にしている業者に頼めますが、タイミングで忙しくて出来ませんなんてこともありますから、十分時間をとって頼みます。遠方の場合ははじめての業者になります。経験から、全国どの業者でもそう値段が変ることはなく、また2、社依頼すると見積額がばらつき多いのも普通です。遠方の場合の業者は施主、不動産屋、ネット検索の地盤調査屋、全国的に繋がりのある足場屋・瓦屋、などから紹介を受けます。もちろんそういう類のネットワークもありますが、自分で知恵と汗をかいて口コミから探すのが一番安心ですね。

今回、現場は距離が近いようで遠いので、基礎は現場近くの地元業者から選ぶことに。以前付き合った設備屋さんの紹介で1社目の見積依頼しましたが、予算の倍近くが出てきました。何度もそういうことはあるんですが、この地域は高いんだろうかとか弱気になったり、浮かぬ気分になりますね。同じ設備屋の社長に高くて予算合わないから、2社目ありませんか?とお願いしました。そうしたら、今工事してくれているカイのところが安く出てきたんですね。予算よりも安いんです。同時に、知り合いの大工さんに頼んでいたところからも金額出てきましたが、こちらはちょっとだけ高かったんです。それで、やはり金額安いところで決めました。どうであれ、現場で私が厳しくチェックすればいいのですから。安かろう悪かろうは許さないという意気込みです。結局、搬出土別途精算で金額は予算どおりになってしまいましたが、まぁまぁうまくいきました。見積書がオーケーになれば、その見積りどおりの注文書を作成して、施主にこの見積もりで工事しますから、ご了承くださいと伝えます。昔は印鑑などもらっていましたが、最近はメール返信でオーケーを頂くのが主です。同時に日程とかも相談しながら、工事業者に注文書を送るのです。基礎工事って全体工事の一部ですが、最初の大きな額の注文です。こういう風に、他の工事も作業していけば家が建つのです。大変な仕事ですが、1個1個目の前の仕事を丹念にこなしていくだけとも言えますね。






フェイドアウト
最後のQ&Aに移ります。(これは次回に読み上げたものですがこの回の質問につきここに掲載します。全員・全回のQ&Aはこちら

第3回目講義より(111012
私は現場監督の方に進んでいきたいと考えています。先日、設計から施工まで行う工務店にインターンシップで10日間ほど行ってきました。その工務店は国産の無垢材を使って提携している大工さんが刻み、軸組みで建てて行くという昔ながらの家づくりをしているところです。とても勉強になったし、この道に進みたいとも思いました。なのでこの授業はとても興味深いです。先生はずーっと設計してきてどうして現場監理まで行う経緯にいたったのですか?工務店を通さない理由がありますか?最後に少しおっしゃっていたかもしれないですが、詳しく聞いてみたいです。(イード)
▲設計から施工まで行うところ、ということですが。設計が主体か施工が主体かで大きな違いがあります。まずほとんどは、施工が主体で設計もするというところでしょう。私は施工管理まで手がけますが、いつも心にあるのは設計のことです。設計のために施工管理しているのです。はじめから現場監督をするのではなく、1年でも3年でもまず設計の修行してください。工務店と設計事務所の業務はダブルところが多く、施主の不利益になると思っています。(先生)
最初のポナペ島の話は、すごいと思いました。ただ以心伝心や阿吽の呼吸というものは長い年月をかけて生まれるものだと思います。先生は、ずっと設計をしてきたと仰っていましたが、以心伝心や阿吽の呼吸みたいなものを設計の上で感じたことはありますか?(トコ)
▲設計の上でも工事上でも、長く付き合ったパートナーや職人との間ではそういうことは度々あります。もっとも、センスがあうから長く付き合えるのですが。特に職人との会話は言葉の世界だけでは、伝わらないことが多いかもしれません。ものつくりはものつくりの世界があるので、余計にしゃべらないほうがいいという意味で、以心伝心がでてくるのです。(この答えは講義のときと違ったかもしれません:先生)
先生は工事、施工の値段が安くなったらお客さんと一緒に喜ぶとおっしゃっていましたが、逆に思ったより費用がかかったり、上手くいかないときにはお客さんと一緒に悲しむのでしょうか?私は良い情報はお客さんに与えても良いと思いますが、悪い事は言わない方が良いのではないかと思いました。(ベコ)
▲確かに、請け負いの場合は悪いことは言わない方が良いでしょう。でも私は施主の代理人ですから、一緒に悲しんでいる暇はないです。情報にいい、悪いは必要ないでしょう。いつも前向きな考えを伝えますから。悪いなりにアイデア出します。(先生)
素朴な質問ですが、先生はお客とお金とどっちが大切ですか?(ガノ)
▲お金をもっていない客は客ではありません。世の中の不特定の方とお付き合いしていく基本はお金なんです。民法なども最終的にはお金で決着するのでしょう。逆に言えば、お金をないがしろにしては信用にもかかわってくるのです。1円たりともおろそかにできません。金の切れ目が縁の切れ目とも言います。お金がなくなれば施主とも別れるのです。(先生)