シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



第6回講義録111109

皆さん、こんにちは。講義を始めますので、ご静粛に。
まずイントロから。




イントロ
原本
訳本
H.Gウェルズというタイムマシーンとか宇宙戦争などで有名なSF(サイエンスフィクション)作家が世界の歴史の本を書きましたが、その第1巻は何と地球の生命が発生してからの年代記なのです。普通は4000年前の古代文明からだとか、せいぜい人類誕生、ネアンデルタール人とかクロマニオン人ぐらいからではないでしょうか。すでに廃版ですが、十数年前に古本屋さんで奇跡的に入手することができました。このウェルズの歴史本には恐竜時代も出てくるんです。何と楽しいではないですか。現代に生きる私たちと動物たち植物たちが長い歴史を経て枝分かれした仲間たちだということがわかるのです。今日お見せしようと探したのですが、残念ながら見つかりませんでした。またの機会にということでしたので、この講義録で表紙と年表をご紹介します。






今回は別の図鑑を持ってきました。今日のお題は、題して「建築・施工・変態」です。図版を見れば一目瞭然ですが、生物は6億年も歴史があり、人類は100万年人間の歴史ははまだたたの4,5000年です。生物はずっと生きているのに、人間は人間の歴史しか考えない、見えないのです。つまらなくありませんか。

プリントを見てみましょう。写真を見れば一目瞭然ですが、バッタは不完全変態とあります。幼虫から成虫へと脱皮して大きくなりますが、姿、形はあまり変わりませんね。不完全変態は、エビ、カニの類と同じで大変古くからある成長の型を持っています。一方完全変態ですが、幼虫から一旦蛹という冬眠状態を経て成虫の蝶へ。まったく姿かたちが違いますね。時間調整しながら最後の仕上げをしているのです。

温暖というのはいつでもゆっくり成長できるから脱皮方式でいい。つまり変化の少ない海のエビカニでいいわけです。しかし、時代が下って地球の軸が触れると四季というのが出てきて、寒い時はじっとして暖かい時に動くようになりました。完全変態の虫は時間の概念があり、暮らしに工夫が必要です。イメージとしては完全変態がよくて、不完全変態が不十分なところがありすが、実は古くからあるのは、先輩は不完全のほうなのです。不完全ではなくて小技のない正統派なのです。ゴキブリなんか、それでずーっと生きてます。もって言えば不動の植物は王道を行くもので、動物は逃れに逃れたさすらいものなんです。

完全変態
after
完全変態
before
さて、建築の完全変態の例を見てみましょう。私が所員時代に担当したコンクリート造の美術館です。はい、さなぎからちょうちょへ変身を遂げました。蛹の時は薄暗くてじめじめして不気味な内部です、それが最後の短期間で美しい仕上げの建物に変身します。そもそもこういう施工は3Kといって、職人や監督はいるけど設計者はその汚さに敬遠します。


つぎに不完全変態の木造住宅の例です。

不完全変態
before









不完全変態
after










ずーっと変わりません。作っている頃と竣工する頃も同じですね。その間さわやかな光や風に満ちています。設計者だって現場を離れたがりませんから、職人にとっては天国じゃないですか。身が入りますね。以上です。では次にテーマに移ります。






テーマ
今回の第6回と第7回はスライド説明が不十分とということで第8回から3回かけて造作工事から終盤までの説明をやり直しました。したがいまして講義録の今回は簡略化してお伝えするにとどめます。

スライド映写。今回の建前から造作工事は先生が他現場と重なったため、バトなどスタッフに現場に詰めてもらい、先生は週1回この講義の前に現場を訪れるというスタイルとなりました。したがって写真撮影もスタッフによるものが多くなります。説明不足の原因はそういうことで、やり直しは説明の仕方を工夫するものとなります。

  • 10/3(月)からバト詰め。
  • 10/4(火)バト。
  • 10/5(水)バト。 講義前に先生現場立ち寄り。
  • 10/6(金)もバト。
  • 10/7(土)この日はチアが現場に行きましたね。ストーブ屋が入るというのでチアを監視に派遣しました。建前の時にストーブ屋が来て打ち合わせをしたんですが、その図面を見るとストーブ本体から1mくらいして2階、小屋裏と二重煙突になっているんですね。それを見て2階は1重にしてもらえないかというとダメという返事。気にくわないので、何故かというと煙突の余熱も室内では有効だから。でも業者はその熱ロスが支障あるというので、自宅ではそうしているが問題ないというと、やっぱりダメだというんですね。我々が後々までこのおたくの面倒を見ていくというので、思わずいつまでも会社があると思っているのか、薪ストーブのメンテくらい自分で見ないでどうするんだと、先生、少々ヒートアップしてしまいました。いづれにしろ煙突の屋根貫通工事も心配でこの日は綿密にチアが工事写真と記録をとりました。詳細割愛します。
  • 10/12(水)先生立ち寄り写真。付け庇。シャチ栓の説明。根太床。大学出のクム大工の紹介。
  • 10/17(月)先生、バト。施主打合せ。庇。
  • 10/18(火)バト。またストーブが映り、、、バトが煙突を観察していますね。よく見てるけど、他現場でこれを参考にするとは限りません。







サビ
ホワイトボードで説明します。今回はちょっとややこしい概念をわかりやすく説明します。
















① 施工管理と設計監理
施工管理は通称「タケ管」と言われています。設計監理と区別するためです。施工管理は施工と同じことと考えていいですね。いわゆる、金額、工程、品質、安全といったものを業務るします。ところで、設計者は設計だけしていては意味がない。設計図を書いたら実際に建てることがほとんどですから、施工管理を監理しなければならないわけです。この業界にいると、当たり前ですが、常識で考えると話がややこしくなるんですね。それは設計者と施工者が分離されているという前提での話ですから。では何故設計と施工が分離されるかということになってしまいます。簡単なようで難しい問題ですが、施工者への信頼感からくるもの、または不信感からくるものでしょうか。手抜きとか談合とか飛ばし、丸投げと悪い言葉が飛び交う世界ですから、やむを得ずという感じ。しかしながら、私は少なくとも住宅建築程度は設計と施工が一体でも構わないと考えているし、実行しているわけです。世の中も、ハウスメーカーや工務店は設計施工をしているじゃないかということになりますが、そのハウスメーカーに第3者監理が必要だという話まで持ち上がりますから訳が分かりません。つまり問題の根本は、設計者という存在がクローズアップされますが、どうやらその設計者が施工はしないという、またはしたがらないというところに問題があるのだと思います。この問題、根が深いのでここら辺で切り上げておきます。

② 請負と委任
仕事を依頼されるとき請け負うか委任されるかということです。具体的には、請負というのは、金額と工期を守って約束に品を作りということです。委任というのは、ある作業を代理でやってくれというだけで、金額や工期を指定するわけではないです。設計依頼はどちらでしょうか、議論がされてきましたが、大枠委任です。金額や設計工期を限定すると質に影響してしまって頼む意味がなくなってしまうからですね。その反面工事は請負が圧倒的に多い。設計で決まったものを作るわけですからあまり早くてもですが、遅くなると色々支障が出ます。特に公共や商業、工業建築は利用上の問題がでますね。ここで、やはろ住宅はあまり利害関係がでないのです。せいぜい入学の問題などでありますが、大問題ではないですから。施工という話になると、住宅程度なら委任でも構わないということになってきます。そして、委任なら設計者も設計の延長としてとらえて依頼を受けることができるはずですが、実際は圧倒的に少ない。つまり、瑕疵責任や近隣トラブル、ひいては施主とのトラブルを恐れるからでしょう。私も以前はそうでしたが、では施工しないから大丈夫と言えば、そうでもないです。特に近年は設計者にも責任とれみたいな話が出てきます。私は以前は設計監理者で工務店が施工をするという通常のパターンでしたが、あるとき施主と施工者が結び施主から訴えられた経験があります。裁判沙汰です。弁護士に頼んで和解に至りましたが、それ以降設計施工一体の道を選んだんです。金額の問題もありました。管理と監理の業務にダブっているところがあります。一体化すればこの費用はなくなり、設計者主導ならば監理自体が消えていくのです。

③ 見積と予算、積算、決算
学生でも学園祭をやったことのある人なら分かると思います。いわゆる事業です。見積をいくらやってもダメです。まず予算ありき。予算組みをして初めて見積もり評価が可能になりますね。また最終決算が気になります。通常の事業の場合、年度ごとに総会を開いて予算の承認と決算の承認を得るわけですから。こういうことはイメージ力と経験が大事ですが、学園祭とかはその予行演習となって、とても有効です。ところで、建築工事では見積もりだけが幅を利かせています。予算も決算もなくて見積書と契約書だけで事が運んでいきます。何故かと言えば、請負工事だからです。例えば電気製品なども請負です。金額と納期と品質で客は満足します。ところで、建築は屋外現場施工で一品生産的なところがあります。ハウスメーカーはだからその一品生産を嫌ってきて合理化にまい進してきましたが、やはり完全は無理でしょう。というか、一品に取り組まなければいけないのですが、根本を取り違えたというべきでしょう。結局積算とは何かといえば、材料手間を拾って金額を入れて合計すること、たんなる技術のことを指します。技術だけ教えればいいみたいなところですね。施工もそうですね。工程とか各種工事とか。請負が前提で、これに疑問はなしですよ、と言いたげです。いずれにしろ、数字嫌いはダメです。このくらいにして、Q&Aにうつります。






フェイドアウト
ではQ&Aに移ります。(これは次回に読み上げたものですがこの回の質問につきここに掲載します。全員・全回のQ&Aはこちら) 


第7回講義より(111123)

あの屋根に張ったパネルはどのような意味があるのでしょうか。
▲モクセン板ですね。野地板です。昔は瓦の下地は土だったんです。その代わりになる工業製品です。

建前から上棟までが2日でできるのにとても驚いた。もしも、天候が悪い日が続いたら、現場での作業は全くないのだろうか。
▲現場での一番の心配事は天候ですね。特に梅雨時の6,7月ですか。雨の様子見て上棟工事します。出来るだけ急いで屋根仕舞して養生なり下地シートをかぶせれば一段落です。以後は現場での作業がまったくないことはなくなります。

先生は在来工法の木造の住宅しか建てないとおっしゃっていましたが、それしかやらないと決めたきっかけは何ですか。また時には違った工法の建物を建てたくなることはないんでしょうか。
▲それはないことはないんですが。全面ガラスの、屋根もガラスのグラスハウスとか。きっかけは話せば長いですが、日本の伝統文化を組み入れた設計なら飯が食えるなと思ったから。何せ日本の木造建築は世界に冠たるものでしょう。

先生は今まで数々の現場や現場の人に出会ってきていると思いますが、それぞれの現場や現場の人たちと仕事をうまく進めていくため心がけていることはなんですか?
▲仕事的には置き場所とか作業場所とか複数の職人がダブらないように工程やスペースに気を付ける。それから現場ではあまり無駄口をたたかない。仕事と関係ない親睦的な話をしない。1015時の休憩時間に立ち入らない。現場に行く場合できるだけ早く。初日などは8時前に行って職人を出迎えるくらいに。などなど、いくらでもあります。

●小設計、中設計、大設計の大きな枠組みの講義はとてもためになるものでした。大設計を行う場合、仕事はそう多く掛け持ち出来ないものでしょうか。
▲個人住宅で年に3から4件くらいが限度です。設計だけでもたぶんそれ以上やると大変ですが、設計施工の場合はもう限界だと思います。

●最後に、文章に第1回講義を文字にまとめてくれてととてもありがたいです。HPを見ればいいということですよね?聞いていても抜けている部分があるのでありがたいです。
▲期待いただいてありがとう。頑張ります。明日第3回目アップします、とのことです。






では時間があと5分ありますから、いつものように手早く感想、質問を書き留めてください。これで終わります。

*この日は、講義中に真ん中の席で学生が話していたのを先生が注意。おしゃべりに夢中で、その注意自体がわからない。2度3度注意してようやく静か。講義終了間際にも遅刻おしゃべりに対して再度厳重注意。講義後、男子学生より相談あり。現場監督になるのですが・・・などなど。昨年までは個別相談がなかったが今年は皆熱な学生がいてほっとする。