シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



第3回講義録111012




イントロ 
皆さんこんにちは。ではイントロからはじめます。今日は私の大好きな音楽の話です。ずいぶん昔の話ですが、小学生のころアメリカン・ポップスというジャンルの音楽がラジオから流れていて、自然と耳に慣れ親しんでいたんですね。でもほとんどが恋愛ソングですから多感な少年には嬉しいやら恥ずかしいやら。中学2年のとき、ビートルズ(B4)、ベンチャーズなんかが流行り出しました。兄が友人からその2枚とフォークソングのピーター、ポール&マリー(PPM)のアルバム(各々すべてデビューアルバムに等しいものでした。時代性ですね)を借りてきたので、
一緒に聴いていました。それまでのポップスとは違うなと感じたのでしょう。特に、PPMはエレキギター使っていないので親に隠れて聴く必要ないし、ヒットソングの割にとっても知的な音楽だと感じました。中学生卒業のときその兄が東京の大学にいくことになり、一人っ子同然になる私はますます音楽にのめりこんでいきました。ちょうどオープンリールのテープレコーダーやアコ・ギターや楽譜も兄が残して手元に残っています。

ところで、PPMはエレキやドラムを使わないフォークトリオで人気絶頂だったのですが、世界は既にB4以降の音楽革命の嵐が吹き荒れていました。奇しくも1966はビート・ポップス(仮にこう呼びます)の最盛期、後付で言えばポップ・ミュージックの確立期と言われています。そのころはラジオ局に集まった無数の曲の中からほんの一握りオンエアされますから、時間は2分半までという制限がありました。それでも今よりましかもしれませんが。日本で言えば短歌に当たるもので、ポップ・ミュージックというのは人種の坩堝(るつぼ)で発展したユニバーサルな短歌だと思っています。

高校1年の冬の2月頃だったでしょうか、今回聴いてもらうサイモン&ガーファンクル(S&G)の「ホームワード・バウンド、邦題・早く家に帰りたい」がラジオから流れてきました。全米№1になったデビュー曲「サウンド・オブ・サイレンス」に続くセカンド・ヒットでしたが№5止まりでした。この曲は完璧フォークソングですが地味ながらエレキとドラム入っていて、またメロディーや2声ハーモニーのセンスが日本人には絶対生み出せない・・という諦観がわいてきたんです。まぁ、私のギターや歌がまるで上達しなかったこともあるんですが。それで、音楽の道をあきらめて、多少頭が悪くとも好きな数学やアートが混ざった建築設計関係に・・などと漠然とした考えに至ったわけです。

余談ですが、当時受験する大学の建築学科の条件にはデッサン課目の試験があって、全然その準備がなく土木工学でもいいやとなって進学したんです。でも土木は理工学がかなり高度で・・結局挫折して、1年被って途中転科で建築学科に入り直しました。結構いいかげんな進路選択だったんですが、初期修正がよかったのかあまりブレずに来れました。もう1曲あります。これは高校3年の夏前に耳に入ってきた曲です。毎週毎週ラジオにかじりついて、新しい曲にわくわくしていた時代です。ビージーズという3人兄弟がメインのバンドで、ブラザー・ギブたちという意味です。当時は情報不足でビートルズ・グループをもじったのではないかと言われたほどB4の曲想を感じさせる、№14までの中ヒットでした。確かに今から思うとビートルズの「イチゴ畑よ永遠に」に似てないこともないですが、これもやはりはやり歌にしてはシリアスです。では聴いてください。







この歌、知っている人、手を挙げてください・・、1人ですか・・2人ですか・・。私は、建築家では尊敬すべき人は見当たらないんですが、音楽となればいくつか挙げられます。そのひとつがこのグループで、特にバリーとロビンの兄弟2人なのです。1人の偉人というのもありますが、結構パートナーシップというのもあります。ライト兄弟とか、特に音楽の世界はレノン・マッカートニーとか。さっきのB4やS&Gは最盛期が約5年ですが、このグループは私の見るところ、2003年まで37年続いた、つまりずーっといい曲を書いて演奏してライブで歌ってきたんです。ただ長く続けてきた昔の名前で出ています・・ではないです。何故2003年で終わったかというと、3人兄弟のあと一人のモーリスが急死したんです。それ以降残された2人は精彩なくなりました。パートナーシップといいましたが、その2人を仲介するもう1人が鎹(かすがい)だったかもしれません。少し複雑な気持ちですが・・。それで、私もそうですが、言葉が先に出てきてああだこうだと言っていることほど、信用ならないものはないですね。言葉以外でその人が行動している様子や残してきたもの、実績に共感して初めてその人の言葉が生きてくるのではないでしょうか。それで、ロビン・ギブのインタビューを聞いてほしいのです。ではチアさん読み上げてください。 


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特に注目は、「曲がなければ始まらない、曲作りこそキャリアで一番大切な部分。まず第一にソングライター、そのあとにレコーディングアーティスト、第三番目にパフォーマーとしてのぼくたち」というくだりですね。ここで、ソングライトを設計、レコーディングを施工、パーフォームを暮らし方と読み替えてみましょう。住宅の仕事って、どこまでそこでの家族や人々の暮らしをイメージできるかにかかっています。そのための設計であり施工だとしたら、やはり「設計がなければ始まらない」と言えるでしょうか。私は歌がうまいだけの人より作って演奏して歌うというパターンが好きになった原点ですから。好きで聴いている音楽から、いつも建築のことを考えたりしてきました。青春期に好きになったジャンルが今も生きているんです。学業だけでは成り立たないんですよ。近い機会に私の住宅作品や雑誌発表を見てもらいたいです。お客さんには一切自分から宣伝することはしないですが、学生さんにはむしろ見てもらって伝えるほうが有効でしょう。 


テーマ
次にテーマ・・スライドの紹介に移ります。前回は深基礎のコンクリート打ちが終わり、残りの型枠にかかっているところで終わりました。ところで、実際の講義では、工程説明を抜かしていたのでこの講義録で補足します。型枠を製作している間に設備関係の段取りしなければなりません。まず電気のことですが、業者決定のタイミングがぎりぎりで、深基礎のコンクリート打ちの前日にようやく仮設引き込みのポールを建ててもらいました。しかし、建てるだけで電線引き込みは電力会社の仕事でその後です。深基礎用バイブレーターに必要な電源が間に合わなくて小混乱しました。翌日電気は入ったのですが後の祭り。

それで、肝心なのは給排水設備工事です。これは型枠終盤、コンクリート打ち前には絶対必要なスリーブ入れという工事です。基礎、給排水工事業者もわかっていますから、前もって段取りの質問連絡が事務所に来て、今回はコンクリート打ちの前日に職人2人が入りました。仮説電柱の建て込みと同日です。ここで、スリーブという言葉が聞きなれない言葉ですが、直訳すると服の袖で、建築では管ですから似ています。使用されるものはボイド管と呼ばれる分厚い紙管です。深基礎の場合でなくても普通の基礎の地面から下の部分に予め管を入れておいて穴を確保しておくのです。型枠が外れたらその穴を利用して内外の給排水管がセットされます。基礎工事の範囲ですが、業者は給排水工事業者が乗り込んできます。予め施工図が出てきますが見逃し勝ちで、業者任せになってしまうこともあります。特に、セットする高さや位置、鉄筋との調整などはまじめな職人が必要とされます。何といっても水物はトラブルとやっかいですから。ほんの半日の作業ですが後の時間がないですから、現場立会いして確認したいものです。

さてコンクリート打ちの後の工程ですが、まず内側の型枠ばらし作業があり、その後すぐに設備業者が給排水管の立ち上がり部分の仕込みの後土の埋め戻しという流れです。もちろん一般部分の型枠、鉄筋組みの続きも並行して出来ます。週末の台風などで中4日空けての今朝は例によって8時過ぎに現場到着ですが、台風去るも雨雲模様の中既にカイとケンが作業中。前回のドロから2人に引き継がれたようです。あまり工事が進んでいないかと思いましたが、台風も直撃ではなかったのでしっかり進んでいます。仮設電気も入ったようです。前回同様、コンベックスとレーザーで寸法確認。設備配管の位置を納屋組マナと写メール、電話でチェックします。設備工事のレンは夕方調整に来る予定と聞いていましたが、その頃私はいないだろうから、明日朝一で立ち会いすることでお願いして帰路に着きました。実はこの日イー・モバイル端末を忘れて、パソコンの威力が半減したのです。そろそろ一体型のパソコンが必要かもしれません。

翌朝は設備配管の確認立会いを朝一でお願いした手前早く現場に。8時10分着。配筋カイとドロ。まもなく設備レン到着。洗面シンクの位置が違っている件あって、やはり職人が勘違いしていたようです。こちらもこの間違いに触発されて設計上の位置見直し案あって、結果的にこの工事でオーライとなりました。職人の勘違いではなくて、図面指示より長年のカン勝ちという、小ポナペ現象ということです。レンと応援一人来て床コンクリートのボイド入れて10時退場しました。このように設備工事は従属的立場があって細かく対応することに慣れています。対極の位置に大工さんがいますね。設備に夢中になっていたら、カイがいつのまにか退場してドロしかいません。肝心の型枠の対角線測れていないので困りました。

対角線を計るとは何でしょう。建物は普通四角形ですから基礎も四角形です。四角形は4辺測って寸法どおりなら良いとは限りません。平行四辺形でも四辺は同じ寸法ですから。そこで対角を測って長方形であるかチェックするわけですが、原寸は長さがあって一人ではメジャーをあてられません。ドロに聞くと長い巻尺なく、私も持ち歩いていませんので。困った小問題が発生です。まずはドロに型枠四方のグラグラしているところを固めてもらって、四辺レーザー実測します。

レーザーで対角チェック
誤差の数値を認識して、2辺3 m、4 m、と測って斜めが5mあるかどうか、の直角三角形測定としました。これなら自分で測れます。結果北西側型枠を5ミリ以上縮めればよいことになって、ドロに伝えました。一緒に作業していたので、ドロも上返事でなしに納得してくれました。今日で内側型枠終わるようです。12時過ぎ帰路としました。

1日置いて早朝8時過ぎ二現場着。今朝は基礎コンクリート打ち最終、一般部分の立ち上がりとスラブ(床版)です。既にポンプ車が準備中。あれ!カイひとりだけ。対角測ってなかったけど、というとさっき測りましたが1ミリ違いでした。どうやってひとりで測ったんだろう?誤差1ミリ・・そりゃそうでしょう。あの時修正したんだから。もし誤差あったらどうなっていたんでしょう?少しいい加減だなぁ・・。マナから電話で、アンカーボルトの変更数箇所あります。はいはい、今からの作業だから大丈夫。それとホールダウンの確認指示図出ていませんでしたと。今更言われても、もう既に鉄筋に締め付けられていますよ。アンカーボルトは土台と基礎をつなぐ金物で土台は横に流れているので位置決めはシビアではありません。一方、ホールダウンは柱と基礎を直接つなぐので前後左右の位置がピッタリしていなければなりません。私の見落としだし、カイの指示確認怠慢となりますが、ここは当たらずとも遠からず・・後の木部との収まりを見越してそのままにしておきます。

四方の型枠の倒れ止めもきちんとしています。生コンの重さで腹が膨れる・・中央部分が外に倒れないようにです。予定通りミキサー車が到着。

連携プレーでコン打ち
ポンプ車運転手がホースの先端もって中に入ってきます。カイはバイブレータもって。二人とも長靴に履き替えました。打設中まもなくケン登場。どこか廻っていたんでしょうか?1台目終わって程なく2台目。

コテ押さえしながら「田植え」
アンカーボルト
その間コテ押さえとアンカーボルト据え付け。これを業界用語で「田植え」といいます。業者によっては田植えをしないで、型枠に固定する方法をとる場合もあります。ある意味、田植えはコンクリートの硬化のタイミングに神経使いますから。生コン車のオペレーターは各人帰り際までに納入書を基礎屋にわたします。納品書程度ならこちらでもらってもいいのですが、あて先は基礎屋なので、すかさず写真を撮っておきます。今回の生コンは計6回11.5㎥でした。前回の深基礎と合わせて13.25㎥でした。見積書は13立米ですからほぼ当たっていました。ポンプ車もいなくなって、床のコテ押さえが最後の作業です。

忍者ぞうり?
後ずさりしながら、最後は忍者の履物のようなものに履き替えて12時過ぎ終了。今日はこれで終わりですか?と聞くと、まだレベラーがありますといって、3時までコンクリート固まるのを待っています。その間プロシードで電話打ち合わせ。マナとは上棟日程と人工(にんく)配分。結構複雑だ。バトとは別の計画の構造材発注に向けての段取りなど。

レベラーの話に戻りますが、コンクリート1回打ちですからレベルが正確にでていません。特に周囲の土台は意匠上水平にそろわなければならないので、周囲のレベラー作業が必要です。簡単な型枠に、水を溶かした材料を注いでいきます。今日は朝から夕まで目一杯で18時半退場。かねてからの懸案のゲストハウス宿泊へ。大工さんが泊まる格安宿泊の体験チェックです。予定より遅くに到着となってしまいました。軒並み閉店間際の宿近くの商店街、食堂で夕定食580円の割に満腹。20時前到着。何のサービスがあるわけではないが、親切極まりない宿主人のおもてなし。部屋は下見お気に入りの座机のある4畳。歩いて1分の温泉風呂屋410円。戻ってみるとご主人が布団敷いてくれて、直ちに爆睡へ。今回はこれで終わりです。 


サビ
製材所から材が届き、大工さんが刻みます。
さて、次はサビです。前回は基礎工事の施工、実現のためのデスクワークを説明しました。それで、この基礎工事と並行して実は大きな工事が一方で進んでいるんです。言うまでもなく木造住宅の骨格である木工事です。上部の施工がある程度進まないと基礎工事もできるはずないわけで、まずは材料手配から始まります。いわゆる製材工事です。

モクセン天井
前回も説明しましたが、既に実施設計段階で1本1本の材木の断面、長さ、本数が出ていますし、金額もわかっています。さらに製材所も一定としていますから、施工段階での作業は楽なはずですが、結構しんどいところもあります。今回は、急遽今までの製材所が閉鎖してしまうといハプニングの直撃を受けました。日程と金額が一から始めることになって、板材を除く構造材を新しい製材所で決めましたが、金額を調整するのに工程は1ヶ月遅れとなりました。また屋根野地板はモクセン板という木屑をセメントで固めた素材に変りました。

エクセルで梁拾い
ところで、私の手がけるシーダ・バーン ブランドの住宅では構造材は全て顕わしのデザインですから、施工段階で最終見直しが必ずあります。そこで、変更しても簡単に数量が調整できるように、ここでもエクセル図が使われています。材寸と数量が決まれば拾い表から金額部分を除いて見積依頼書作成、送付、見積書受領という流れです。オーケーならば、注文者である施主に見積書つきの注文書を見てもらって、印鑑なり最近は添付メールのオーケー返信を頂きます。納期、納品日などを相談して注文書送って構造材施工作業終了です。時期はだいたい基礎工事の3週間から1ヶ月前に注文すると、納期が基礎着工日に重なります。そうすると、下部構造の基礎工事と上部構造の大工、墨付け刻工事が重なって並行に進行するので、連携して工事できるわけです。私は、基礎工事の方に眼を離さぬようにして、墨付け・刻み工事は手馴れた棟梁に任せることを基本にしています。ベテランの腕を持っている上に、今までにもう何十件も仕事をしてもらっているために、標準的なおさまりは阿吽の呼吸であるし、標準図という図面も現場ごとに作成したものを蓄積、修正しながら活用しています。特殊なケースは電話連絡、詳細図連絡などが必要です。場合によっては、工場に出向いて直接談判とおう場合もあります。見積り、注文金額は、1坪あたりいくらという単価×坪数と荷揚げ荷卸し運搬費、金物などの諸雑費等から算出されます。単価はこれまでの棟梁との交渉から落ち着いてきましたが、手刻み(プレカットという自動機械カットでない)場合、原則坪当たり3人工程度は手間がかかるとみてきたのです。それに大工日当をかければ単価の目安がつきます。

さて、「積算」ということについてですが、要するに設計であろうが施工であろうが「お金」が係わりながら仕事が進行していくという意味です。そこで設計についても概ねの流れを説明をしておきます。まずお客さんが家を建ててもらいたいと決心されて、設計契約というものを交わします。このとき設計料というものが発生します。まず設計料はどうやって算出するかです。建築の規模と施工費には比例関係があります。規模が大きくなれば施工費が増え、小さければ減ります。その係数として坪単価計算という考え方が古くから続いています。例えば坪60万円でできる建物なら、20坪で1,200万、30坪で1,800万円の施工費となります。工事費が出ると、今度は設計料との関係ですが、同じように比例関係にあるとします。設計料率は設計者と施主のパワー・バランスの上で決まってきますが、例えば10%としますと、30坪の家で工事費1,800万円設計料180万円合計1,980万円となりますね。その他諸々の費用が予想され例えば120万円とすると、施主の建築総費用は2,100万円となります。逆に、施主が自己資金と銀行借り入れ等で2,100万円が予算だとしたら丁度いいということです。
また施主の希望部屋数とか広さの合計が30坪だとしたら、これも予算上ちょうどいいということで、一般的にこのちょうど良いところを探し当てる作業が最初の要だといえますね。ここがきちっとしていないと、後々追加費用の有無に悩まされることになります。契約直後に基本構想という、考えられる何案もの中から最適案を検討する段階にも、この費用計算は重要です。

私の仕事では、住宅の質は毎回同じで間取りや立面が変るだけですから、どんな案であろうと施工費等を試算表というエクセルの予算改革表にまとめて、細かい工事費用まで目標設定しています。例えば、基礎工事費は90万円とかタイル工事費を35万円とか細かくです。これを予算配分といって、工事の内容に係わらず、分捕り合戦を実施、総額を振り分ける作業です。各々の工事はこれ以上費用がかかると他の工事にしわ寄せが来るぞというシビアな関係を最初から構築しておくのです。さて、案も決まり模型(隣接敷地の建物も入っています)や基本図面などが出揃って基本設計も終了すると、その案に相応しいように総額を見直したり、各工事費の増減を微調整します。次の段階は実施設計です。建築全体と各部分のキャド図面なりスケッチが作成されていきます。また先ほども言いました標準図というのも造作や家具、設備に至るまで大量に、といっても50枚くらい、準備します。次に建築の材料とか工法、それらの数量の検討に移ります。ここでは「拾い」という考え方が幅を利かします。ズバリ「積算」ですね。さまざまな費用を積み上げて全体の額を合計するやり方で、前から説明しているように、エクセル図とエクセル表が連動するように仕事を進めます。拾いを合計した各工事の積算額が予算額にあうか、近ければその設計は実現オーケーに近づいたことになります。ここでも設計の最後に、総額の見直し、各工事費の増減の微調整があります。ここから施工段階に入ります。ここで、施工費=各工事費+施工管理費ということを覚えて置いてください。基礎工事費やタイル工事費の集まりだけでは施工費にはなりません。

施工管理とは工程管理、工事費管理、品質管理、安全管理という管理作業があってはじめてきちんとした建築が出来るわけですから、その費用は結構なものです。各工事費の総額(工事原価の総額)の約15%から25%くらいの費用となります。私は設計と施工の両方を一貫してしますので、両方あわせて25%近い数字で仕事をしていますが。なお、施工段階での業務の流れは、工事会社の選定、工事見積もりの検討、注文書の発行、段取り・工程、品質管理、安全管理など、多くの専門の工事会社とのつきあいが主となります。 

今の時代、設計と施工が分離されて当然という風潮が特に設計界では大勢ですが、今までの話で少しでも設計と施工が不可分なものだと気づいてくれれば幸いです。 






フェイドアウト
ではQ&Aに移ります。(これは次回に読み上げたものですがこの回の質問につきここに掲載します。
全員・全回のQ&Aはこちら) 


第4回講義より(111019)
先生が今の仕事で一番の楽しみは何ですか?
▲お客様から電話がかかってきたりメールが来ます。遠くからでも訪ねて来てくれて、2時間前後お話を交わす機会があります。お金も仕事も何もないフリーな、わくわくした気分ですね。契約してからも基本構想などの説明をしているとき、実際の案がまだ固まらない時もです。まるで恋人に会ったり新婚当初の時期までと同じものです。要するに、現実的なレベルになる寸前、不安定な時期が一番の楽しみです。

先生は現場を全て自分でみられ、スタッフさんたちはめったに現場へ行かせないということですが、それではスタッフさんたちの現場感覚が身につかず成長できないと思うのですがどう考えてそうしているんでしょうか?
▲家づくりは一生ものですから、施主に対する責任というものをいつも考えています。教育機関ではないからいかにスタッフを使うかは考え抜きますが、成長など考えている余裕はないのです。若い者にはまだまだ負けないぞと、全て自分で見る気持ちはありますが、仕事の重複はしばしばあるし、体調が悪いときもあります。そういう時はスタッフに現場を任せます。止むを得ずいうことです。私が直接現場にいなければと思うのは、近年基礎工事の時くらいになってきました。スタッフは若く私より判断がまずい場合が多々ありますから、精一杯連絡を取り合いリカバーします。電子機器のおかげで遠隔操作するわけですが、もちろん現場に詰ることは若い人には辛いですが、優秀ならば情報処理能力を磨くチャンスでもありますね。

これから就活ですが、分野を選ぶ時に好きなことと仕事にするか、仕事と趣味は別にするのかと考えることがありますが、とりあえず儲かる仕事に就けば何でも楽しく感じるのかなと思いました。「お金ありきのお客様」いい言葉だと感じました。
 勘違いです。とりあえず儲かる仕事など滅多にないし、あったとしても長続きしません。私が「お金」のことを真剣に考えるようになったのはつい最近です。それも「施工」を手がけてからです。少ないながら儲かるようになりましたが、仕事ですから「楽しく」の一言では言い尽くせないかもしれません。設計専業のときはむしろお金は煩わしかったし、儲けも少なかった時代が長く続きました。芸術系のあなたなら、若い時は金のことなど考えないでください。金を得るならまずはコツコツやっていくしかないと思います。「お金ありきのお客様」は年季を積んで苦労した末に、失敗を重ねたあげく、はじめてわかることでしょう。