事務所の設計図面はここ3、4年ほとんどCADによるものとなっている。もちろん手書きの設計図の大切さも十分評価しなければならないが、こと内部的にしろ対外的にしろ意思疎通としては1か0かという正確さを基本にしなければ間違いを起こすだけであると観念した。しかし結局図面は最終伝達手段でしかないであろう。そこに至るまで長い道のりをCADに頼るのはあまりうまくないことにも最近気がついた。つまり変更が楽だからといって、何枚の修正図面をその都度つくっただろうかと、その膨大に費やした時間を悔やむ。むしろ最初(図面起こし)と最後(決定図)だけお世話になろうじゃないかと。
では途中、どうやってデザインを深化させていくかである。もちろん手書きスケッチが手っ取り早く、至る場面に出現してきた。立体把握として欠かせないダンボールやスチレンボード模型も設計時代の伴奏者として事務所机に鎮座。ニューカマーはエクセル図というお絵かき風図面。これはカラーの平面図に設備機器や建具の仕様、写真、金額が組み込まれ、全体予算計画にも連動する。その明快さが、施主打ち合わせの主役として躍動していくであろう。
さて、今回はスケッチの変わり者として、起こし絵を紹介する。これは正確な寸法を基準とした部屋の展開図を手書きでスケッチして、切絵のようにして立ち上げると、たちどころにインテリア空間が出現するもの。貫構造だから高さ関係も頭にしっかり入っていて、所要時間は慣れれば15分といったところであろうか。セキレイという薄いグリッドが入ったトレペ(トレーシングペーパー)に太め万年筆で書き込むのがいい。いつもいつもこうではない。もっとも多用するのは1点消点のスケッチパースであるが、たまにはこんな遊びをしてみたくなる時もある。ここではリビングスペースのソファー、本棚、壁、窓等のバランスにチェックを入れたわけである。