シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



現場速報-10Y邸4日目午後、土台敷き



午後から第2便到着とのこと。しかしどこに置くかがイメージできないので、事務所に聞くとあやふや。すぐにレッカーのスペースを事務所Tさんに調べてもらうと、幅4.5メートル長さ5メートルという。境界から6メートルで長さとり、その奥に材を置けるか棟梁に聞くと、大丈夫でしょうという返事で一安心。そうこうするうちユニック車到着。予定通りの位置に材を置き、ほっとする。ある程度、小さな束など、貫、ベニヤなどを構内に。それから長い柱材を手で中に入れ始め、いわゆる組み起こしの作業に入る。これはイ通と西通の2箇所を組み込む。そこで終わり。





遠くで雷が聞こえ、稲妻も見える。ブルーシートあるだけ材の上、組材の上にかぶせ作業は終了。時間16時過ぎ、今日は早めに切り上げ退場。上棟工事は請け負い工事なので大工のさん都合で早く帰っても構わない。後の造作工事は常用といって1日いくらの仕事との違いである。何故その違い出るのかは別の機会に説明したい。

休憩時に出す缶飲料の保冷剤を毎日電車で持ってくるの大変なので、クーラーボックスといっしょに明日もってきてもらうようお願いした。飲料残り少なく、10Yさんにメール連絡。ただし持って来られるの土日だろうからもっと早く伝えておくようにと事務所Tさんに連絡。ところがどうやら10Yさん夏季休暇中で明日持ってきてくれるそうで一安心。最後の1時間デジカメ液晶部分に不具合発生。最後の地組み、それでも撮っておこうと思ったのが幸い1枚だけ取れていた。そういえばつい最近地面に落としたことあったので、衝撃で液晶やられたかも。あすから違う機種で代行する。事務処理をして、16時半帰路につく。 
(つづく)

現場速報-10Y邸4日目午前、土台敷き

基礎工事の後半を所員Tさんに引き継いで工事は無事完了。これまでの工事の流れは、現場で基礎工事が進むと並行して製材所から大工さんの刻み場に納品された木材を11本棟梁が墨付け(加工部分の原寸指定)して刻み(切断穴あけ加工)をしていく。以前はその工場に出向いて打ち合わせや検査を行っていたが、近年は棟梁の質疑をファックスやメールで解決している。棟梁はこの一連の仕事、もう既に何十軒もの仕事を繰り返してきた。仕口や継ぎ手という伝統工法に順じた標準仕様も隅々まで決め込んであるので、意思疎通に不安はない。予備日土曜日みて前週の金曜日には仮設足場も設置された。事務所Tさん現場立会いしてもらい問題なく、いよいよ建て方工事に入る。

622分芦屋発に乗ると8時前に着となることがわかった。これより早く行っても快速もないし、ベストの選択ということで、途中駅で乗換えと思っているうちに隣のホームから快速らしき電車が出て行ってしまった。そうか、階段上下して違うホームで乗換えだったんだと思ったときは時すでに遅し。結局17分後の次の快速になり駅88分着で現場820分着。

すでに土台等の第1便が搬入終えるところ。棟梁、父さん、ミツ、グチ、ユウの5人。まずは土台敷き。文字通り赤身の杉の土台はシロアリも嫌うとされ、実際今まで支障はない。加工された材を検分すると若干標準図と違うところあったのでチェックしておく。スクリューボルト位置なども既に訂正されていたが、手元図面は未修正のまま。ボルト継ぎ手、アゴかけは長さ15ミリ蟻継ぎのサイズも若干違うので、所員Tさんに修正依頼。それから土台先端の処理、これは棟梁の裁量で土台勝ちに出てる。それから大引きの大入れの後、釘打ちは大引き側から。元棟梁のお父さんが「間違ったの誰や?」と釘の打ち直しをしている。土台側から斜めに釘を打つと大引きが競りあがるからだと言う。あいかわらず日照りが強く、午後半ばまで隠れる陰もないので車中で辟易としているうち、土台敷き10時半くらいで終了。

いよいよ建て方。今日はレッカー車来ていないので、手運びで組んでいく。まず北側から。柱半間ピッチのリッチな架構。取り合いが少ない平屋部分で簡単に一列立ち上がる。北側のお隣の駐車場越しに見るとなかなかかっこいい。また周囲のお宅に比べて北側が平屋になっているお家はないので既に存在感が発露しだしている。一段落したのか、昼前に納材第2便来るように棟梁が電話連絡している。日差しが厳しいのか昼過ぎても動きがにぶい。建て方が進まないのは、材待ちのせいもあるかも。
(つづく)

目論見抄-10EX邸の起こし絵


事務所の設計図面はここ3、4年ほとんどCADによるものとなっている。もちろん手書きの設計図の大切さも十分評価しなければならないが、こと内部的にしろ対外的にしろ意思疎通としては1か0かという正確さを基本にしなければ間違いを起こすだけであると観念した。しかし結局図面は最終伝達手段でしかないであろう。そこに至るまで長い道のりをCADに頼るのはあまりうまくないことにも最近気がついた。つまり変更が楽だからといって、何枚の修正図面をその都度つくっただろうかと、その膨大に費やした時間を悔やむ。むしろ最初(図面起こし)と最後(決定図)だけお世話になろうじゃないかと。

では途中、どうやってデザインを深化させていくかである。もちろん手書きスケッチが手っ取り早く、至る場面に出現してきた。立体把握として欠かせないダンボールやスチレンボード模型も設計時代の伴奏者として事務所机に鎮座。ニューカマーはエクセル図というお絵かき風図面。これはカラーの平面図に設備機器や建具の仕様、写真、金額が組み込まれ、全体予算計画にも連動する。その明快さが、施主打ち合わせの主役として躍動していくであろう。

さて、今回はスケッチの変わり者として、起こし絵を紹介する。これは正確な寸法を基準とした部屋の展開図を手書きでスケッチして、切絵のようにして立ち上げると、たちどころにインテリア空間が出現するもの。貫構造だから高さ関係も頭にしっかり入っていて、所要時間は慣れれば15分といったところであろうか。セキレイという薄いグリッドが入ったトレペ(トレーシングペーパー)に太め万年筆で書き込むのがいい。いつもいつもこうではない。もっとも多用するのは1点消点のスケッチパースであるが、たまにはこんな遊びをしてみたくなる時もある。ここではリビングスペースのソファー、本棚、壁、窓等のバランスにチェックを入れたわけである。

再訪記-10X邸

建物は無事竣工しご家族もすでに入居されている。しかし現地には次の出番を待つ仕事用の車が置いたままである。遠方の現場には事務所から車を持っていき、宿なり駅なりから通勤し、そのまま現場事務所代わりに使用している。ようやく次の遠方現場のスケジュールが決まり、車を移動するためとご家族の暮らしぶりを拝見するため、2ヶ月ぶりに訪問することとなった。通いなれた特急電車を降りて、常宿としていた旅館のご好意でガレージにとめさせていただいていた旧アルトに乗って到着。べんがらの塗られた外壁に見とれていると、奥様とお子様たちから笑顔で迎えていただいた。まだ引越しの余韻も残っているにもかかわらず各部屋を案内してもらい、しばし歓談。お子さんたちが嬉々として階段廻りの貫を昇り降りするのにびっくりしたり、家の中を駆け巡るのをみて、あぁ無事家が出来てよかったね・・。あれからもう2年も経つのかと感慨にふけった。

 縁結びで知られる神社が60年に一度の特別拝観をしているというので、夫婦でお参りにいこうということになった。その地域は私の建築設計の師である菊竹清訓氏が神社の境内をはじめ、近くの街にも多くの設計作品を残されていて、私も短期であるが仕事を任されたこともあるゆかりの地でもあった。拝観ついでにご祈祷も授かった旅行から帰った数日後、なんとその近くにお住まいの10Xさんから依頼のお電話をいただいたのだ。事情を伺っても、当然ながらそういった私の履歴事情などご存じもなく、ただ私の雑誌記事やホームページを見て気に入ってくれただけという。偶然にしても不思議なこともあるものだと思いつつ、その縁と10Xさんの熱意に動かされ、快諾して設計を始めた次第である。

独立して設計事務所を営んでからは、無名のうえ上昇意欲も人並み以上には及ばない。わが師のように遠方の仕事を頼まれるなどは夢のようなことに思っていたところ、ようやくこの年になって遠くからのご依頼もいただくようになっていた。今回、ささやかながらも師の作品の傍に建物を残すことができたのは10Xさんの神がかり?の1本の電話からなのであった。そんな感謝の念もたぶん奥様は露知らず、早々にお礼の言葉を述べて帰路に着く。

途中、菊竹氏の設計である美術館に立ち寄ってみた。もう30年前であろうか。昔を思い出しながら、ぜんぜん変わっていないな、いやこの床タイルはこんなワックスがけ風だったかな等とつぶやきながら、しばしロビーで休憩したのであった。今、この美術館の写真を見返して、菊竹先生の和モダニズムからは、袂を別ったものなのか随分離れたところに来てしまったなぁ、とつくづく思う。

(なお、この家の施工管理に際しては、修行時代の同窓生であり今は地元に戻り大活躍しておられる建築家のご助力によるところ大であった。)

現場速報-10Y邸3日目午後、基礎工事


型枠設置が終わり、ベースの鉄筋を並べて組んでいく。型枠からの逃げをとるが、これを被り厚さの確保ととらえてチェックする。40×50×60ミリという小さなブロックを適当に並べて鉄筋全体を捨てコン面から浮かす。これも被り厚さのため。基礎底面は60ミリをたてて浮かすところ、勘違いか50ミリで立てている。急ぎ是正お願いする。基礎中央を通る長い13ミリ鉄筋を主筋といい、並行して両側に側筋が走りこれは10ミリ直径。鉄筋の交差するところを番線でしばって固定していく。近年はこれを合理化して予め溶接してくるユニット鉄筋の場合もあるが、選択は今のところ業者次第としている。また、今回は主筋のフックを現場で加工していくようだ。親方が担当。短い基礎部分は逃げがきかないところで、どうも両端が長すぎて型枠との距離が取れていない。やり直しだ。長いところは2本となって継ぎ手仕様だから、片側だけフックにしてあとは継ぎ手50dで調整できる。この曲げ機械だが、中央の●部直径が39ミリあったから、13ミリ鉄筋用のもの。(3+2倍の)曲げ5d確保できる。10ミリ鉄筋も同じもの使い、こちらは(4+2倍の)曲げ6dです。いずれにしろ、設置は現場作業には違いないから、いがみや狂いのないように随時見届けていく。普通は工務店の監督さんがしているのだが、この程度のチェック設計者が直接できないわけではないこと、分かって頂けるだろうか。



一段落したところで、来週から担当は事務所Tさんと交代予定。確認作業はベースコン打ち、立ち上がり型枠での被り厚さと対角寸法のチェック、立ち上がりコン打ち、締め固め、など。レベラー(天端を精密に一定にする)、型枠外し、浴室土間コン、束石設置などその後の確認作業となる。今日は土曜日、作業中お先にということで、少し早めだが16時40分退場し、近くの陶器市へ向かうことに。
(つづく)

現場速報-10Y邸3日目午前、基礎工事

一日おいて基礎工事3日目。前回、往きの通勤時間がかかったので時刻表調べて6時37分発で8時10分着の電車にしてみる。電車下りたのを見計らったように事務所Iさんから連絡。上棟時の式が平日になるから、10Yさんと日時よく打ち合わせしてください、と。今日は土曜日で現場に来られる予定。西側隣地に足場空中を借用する件、北側給排水管の露出なくすためブロック1段分土盛りの件とともに、3点忘れず打ち合わせすることに。

古アルトで現場着8時25分、快晴だが今朝は秋のようなさわやかな風を感じる。基礎屋さんは少し遅れて登場。鉄筋などの荷積みしていたのだろう。基礎2人+設備の常連に、後から親方着き総勢4人で現場作業にかかる。鉄筋は長い主筋とフック付いたベースと立上りあばら筋。ベース型枠はスパン長いところは杉の足場板の使いまわしと短いところはベニヤを使うようだ。型枠設置からはじめ。倒れないように地盤に木杭打って釘止め。地盤までぎりぎりだが固いので作業は楽そう。 

親方「布基礎久しぶりや。
   今はどこでもベタ基礎やから」

先生「懐かしいですか」

親方「でもな。ベタ基礎は湿気の問題とか心配やけど、
   立上り少ないから床下もぐられへんしな。
   ほんま心配しとるんや。」

先生「でも鉄骨系住宅は布基礎じゃないですか?」

親方「ほんまや」

先生「何故だか知ってますか?」

親方「わしらそこんところはわからへんけどな」

先生「壁の耐力が強くて基礎の成があったほうがいいかららしいですよ。
   ある意味布基礎のほうが強いんですよ」

親方「そういうことなんか」

先生「でも今はどこもベタ基礎にするのは、
   手間がかからないからですね。
   何より金額安く済ませることで頭いっぱいですから。」

親方「わしら最近メーカー住宅やらへんのや」

先生「そりゃ贅沢です。仕事選んじゃあかんですよ・・・
   でも今回は私たちは一見さんなのによくお受けいただけました。」

親方「最初はそんなええ話あるんかいなと思うたで。
   冷やかしちゃうかと。こっちもな、いろいろ調べて受けたんや。」

先生「ありがとうございます。
   うちはきちっと仕事してくれたら現金払いだし、
   無理押しはしませんから」

親方、今日は鉄筋組みの段取りしながら仕事ぶりをしゃべってくれた。

さて、型枠設置したので、隣地境界からの寸法が目に見えてきて、再度実測する。境界杭から西、北25ミリ塀のブロック基礎控えているので、型枠外側まで1100+25-225=900ということになり、ほぼその通りの工事である。ついでに各間仕切り基礎の寸法あたっていく。この人たち寸法取りは慎重にやっているので、勘違いないかどうかの点検の意味。今のところ矩の手はトランシットを信じるだけ。最後の立ち上がり型枠で対角確認を待つことに。
10時過ぎ10Y ご夫婦お見えになる。私は離れたところにいたので、すでに職人さんに冷たい飲み物振舞ってくれたよう。遅ればせで親方に紹介。朝方の施主連絡事項を伝え、その後お隣へ足場の件で挨拶に行かれた。手土産は特に持っていなかったように思う。結果、ご主人にご了承得たようだ。
先生   「お隣いかがでした?ご主人おられましたか」
10Yさん 「はい。同世代の方なので安心しました」
先生   「そうですね。
      年配の場合いろいろ知恵がついてくる場合多いですから。
      でも今後も心遣い絶えぬようお願いします」
10Yさんからから柿渋についてのお問い合わせ。
  
10Yさん 「屋根野地板の裏を予め塗っておいたほうが楽ですけれど、
      自分たちにその時間ありますか?」

先生   「納品場所が十分でないですから上棟時に納品です。
      上棟後すぐに野地張り工事になりますから時間的には余裕ないです。
      一般的には製材所で塗ってもらっていますが、
      本人が現地まで行って塗れても旅費も宿泊費もばかになりません。
      柿渋というのは言ってみれば色づけですから。
      梁や桁もまだ塗られてないわけで、
      住んでから一緒にじっくり塗りこんでいくのでもいいわけです。」

10Yさん 「わかりました」

先生   「道路沿いの斜面地もそうです。皆さん擁壁などで体裁とっていますが、
このままでもシンプルでかっこいいですよ。あとでゆっくりつくりましょう。」

10Yさんから職人さんへの10時、15時の休憩飲み物、箱買いを預かりました。ポカリ280g×24、三ツ矢ブドウサイダー250g×20、随時休憩に出しますがクーラーボックス用意しなければならない。それからビニールゴミ袋45リッター10枚5袋。現場置き場所まだないので、いずれも車中預かりとした。「施主様から休憩時の飲み物頂いています。10時、3時にお出ししますけれど、今日は冷えていないので帰ってからでも飲んでくさい」「いやー、そんなに気使わんでも・・。そうやな、明日からクーラーボックスに氷入れてもってくるわ」

近隣対策だが、現場仕事には騒音や振動、塵埃あるいは路上駐車、大型車の出入りなど人為的な異常事態がつきもの。問題は誰が苦情対応をするかということ。まず元請工務店はいないので、施主とよく相談しながら対策講じなければならない。最終責任者は施主だが、苦情受けたり連絡する役目が事務所となる。事務所としては請け負い工務店との誤解がないように近隣挨拶は控える方針で、近隣挨拶のときに施主がそのあたりの事情よく説明しておく必要がある。しかし設計と施工の分離状況が根深く浸透している状況ではどこまで理解を得るやら分からない。

(つづく)

現場速報-10Y邸2日目午後、基礎工事

午後から捨てコンのレベル出し。水糸を張りながら短い鉄筋を要所に打ち込んで、捨てコンの天端の目安にする。丁張りなしでレーザーを使う工事屋さんもいるが、ここでは水糸を張りながらメジャーで計る作業にこだわる。精度に対する信頼感によって作法が変わるようだが、結果的にはどちらの方法にも大差はないと思うが。事務所Tさんから足場の件で連絡あって、西側境界は空中はねだしが必要とのこと。施主にも報告して前もって隣地の方の了解を得るようにしなければ。


生コン車到着。一気にスロープ上まで上がり、基礎各所には赤ターバンがネコ車で運搬。均しはいぶし銀、コテ押さえを頭領という分業で進む。今日はこれで終わり、明日またよろしくということで、先に帰ろうかと思ったら、職人が明日はお休みしたいという。さらに打設1時間したらそこそこ固まるので、もうすぐ墨出しかかりますというので、立ち会うことになった。いつもは翌日墨だしだったように思うが、そういう芸当もできるんだ。

墨出しは水糸をたよりに下げ振りとメジャー実測を使い分けて縦、横の通り芯をうつ。芯が終わるとその両側フーチング幅225ミリも墨付けする。これできちんとベース位置が確定するわけで、見えないところだがやはり丁寧な仕事という他ない。確かにコンクリートは固まっていないが、人が静かに乗っても靴跡が食い込むことはない。そうこうするうちに親方が現場にきて、工程の相談。明日病院にいかねばならない職人がいて、効率悪いから全員休もうということだが、真実のほどはわからない。素朴な職人さんたちだから急にでもそう言われたら、ああいいですよと言ってあげる他はない。この暑さの中、こちらも休みはありがたいが、休んでその後どうなるかが心配だ。できれば連休前にコンクリート打ちをしたいので。と言うと、親方も思いは同じ。2日ほどベース型枠と配筋で翌日ベースコン打ち、その後立ち上がり型枠で翌朝コン打ち、夕方レベラーというようなことで、なんとか目処がたつ。ようやく本日の仕事も終了。舗道に敷いている車両出入りのための鉄板だが、毎日片付けてくれる。後片付け終わればちょうど5時で、やはり初日よりは楽な1日だった。

こんな風に基礎工事のはじめから現場に一日中張りつくようになって、5、6箇所になろうか。一般に設計者は工事監理業務といって、施工者が設計図書通り工事しているかどうかをチェックする。その職務は技術的な側面についての義務であろうから、どうしても形骸化してしまうのではないか。つまり現場監督さんがそこそこ優秀であればどうしても頼ってしまうから。でも、現場に一日いると、その日の光や風の具合、近隣の暮らしぶり、道路の通行の様子など、そして何よりも職人さんたちの意気とか腕っぷりが直に伝わってくる。それらが綾なす現場物語もなかなか魅力的である。現場で掃除したり、職人さんとの相談で上り下りしたり、ごみ処理をしたりと体を動かすことも、設計という頭脳労働の疲労を癒してくれるのかもしれない。次回からは工事は本格化、配筋、型枠へと進んでいく。
(つづく)

現場速報-10Y邸2日目午前、基礎工事

ランマー
基礎工事2日目。家を6時半に出て8時40分現場着となる。帰り時間より30分くらいかかっている。まだ時刻表研究がし切れていない。今朝もすでに暑いが、やはり高台の風が救いか。昨日の続きで現場作業にかかっているのは頭領、いぶし銀、赤ターバンの3人。残りの布堀りを終えて、午前中クラッシャーランという砕石を敷く。昨日の通り、固い地盤は砕石なし。砕石はランマーという機械で地面を締め固めする。事務所Nさんと10Z邸構造全般の見直し連絡あり。一応実施設計で構造材の選定は終了しているのだが、製材所に発注をかけるに当たって漏れがないか、おさまりよいか、重要部分の再確認が終わっているかなど、Nさんの厳しいチェックがあればこそ、処理していける。CADから作成したPDFファイルを見ながら電話で相談。


あっという間の午前中、でも4時間は働いているからおなかもすく。お昼は昨日もだが弁当持参。2リットルのサーモス(魔法瓶)に冷たいお茶をいれて持ってきている。何せ車中暑くてたいへんなので。前回10X邸の現場のとき、宿の食事を適宜弁当に詰めて現場で食したのだが、外食に比べゆっくり時間を過ごせるのが気に入って今回もお昼は現場付近から外食に出ないでいるわけだ。しかし、気をつけなければいけないのは、昼休みや他の休みでも、職人さんに近づいたり話しかけないようすることである。休憩の邪魔にならないことはもちろん、変に仲良くならないようにという意味合いもある。もっともこちらも昼寝の時間が惜しいからちょっかい出してる余裕もないが。(つづく)

現場速報-10Y邸1日目午後、基礎工事


午後からは移動雲が出てきて時折日陰となり風も吹いてそこそこ車内でもしのげる。次の現場予定である10Z邸担当の事務所Nさんがこの工事の墨付け刻みをしている棟梁との折衝も担当していて質疑を受けて解決案をメールで打ってきた。基礎工事と材木加工が同時進行しているときが、一番決断しやすいので、このようなやり取りは頻繁となる。主に半柱の位置や梁柱の仕口などの詳細話。速やかに返事して、棟梁に伝えてもらう。上棟日の相談もあって、3週間過ぎの月曜日からと決定。その日に前後して関係の諸工事の注文書等は事務所Iさんが段取りしてくれることとなっている。

掘り方が軌道に乗ったようなので、周囲の安全に気をかけることに。まず前面道路対策だが、場外搬出のダンプが歩道乗り入れして舗装が傷つかないようにと鉄板2枚用意してくれた。道路から勝手に敷地に入らないように柵と標識が必要なので、親方に相談したところ、頭領が作っていた土留め板に事務所で用意した立ち入り禁止テープを張って完成。このへんの配慮は設計者としては苦手な部類、工事屋さんの常識的な機転感じるところである。出入り口部分はコーンに寅バーをかけた。そこに事務所で用意した立ち入り禁止テープを張って完成。こうして現場も一段落。先ほどの月極ガレージの契約に再度駅前に行く。申込金なし、保証金・礼金なし、日割り計算など好感度高い不動産屋さんでよかった。

現場に戻って事務所Sさん、Yさんとも連絡、10Z邸設計図・ホームページのメンテ等の相談。現場終了支度にかかったなと思ったら、やはり17時ちょうどで退出。3、4日仮設水道水がきていないので舗道掃除は箒とスコップだけで、マアマアの片付けか。帰り際、北隣の奥様が玄関先から現場をしげしげご覧になっているのを横目に退場。駅より電車で帰路に。いつものことながら初日は慌ただしく過ぎ去っていった。
(つづく)

現場速報-10Y邸1日目午前、基礎工事

基礎工事初日、いわゆる着工当日。8時20分現場着。事務所から古アルト。夏真っ盛りの今朝、敷地前の道幅が広く街路樹もないため、かんかん照り状態。高台で風のあることが救いだが、日中は暑さをしのぎ日陰を求めて車移動しなければならないので思いやられる。

すでに基礎工事屋さんが現場作業にかかっている。一般的に全国各地、工事の時間は朝八時から夕方五時(午後六時の場合もたまにあるが)と決まっているようだ。北は宮城、南は島根まで行ったが日の出と日没時間が変わるだけで、同じ日本である。オフィス通いや店舗詰めの方とは時間帯の感覚が違っているのは、建築現場が日照時間の平均にあわせているだけでなく、きりがいいからだろう。12時から13時までの昼休みと10時、15時の小休憩挟んで、2時間ローテーション4回というきわめて明快な働き方なのだ。8時工場、工事、9時オフィス、10時店舗という時間差が都会の朝の通勤すみわけを可能としているのかもしれないが。

基礎工事屋さん、親方60代風。以下、頭領風といぶし銀風50代の3人。少しして設備屋さん来場。赤ターバンした30代風1人、親方の説明によると仕事のあいているときは応援部員となって働くそうで、設備会社の一人親方のようだ。仕事が重なる部分もあるので、合理的起用法といえなくない。設備の打ち合わせとしては、盆明け先行配管、北側法面200程度の部分はあとでブロック1段分土盛り。雨水排水経路変更、スケッチあり。分担金等金額決定につき立替依頼。詳細別紙あり等々。さらに9時前電気屋さん、60代エルダー風。電気盤の位置など話す最中、まだ機種を探しているとのこと、計器窓が少ないものを。仮設電気すぐ申請すれば盆前に電力会社来てくれそうとのこと。本設も仮申請しておくので、正式書類に印鑑ついておくようにと説明。そうこうするうちに、3メートルほどの仮設ポール1人で運んできて、土つまみで穴掘りして、電柱立ててしまった。こちらも親方に違いないが、手下なしでちょっと驚きである。

とにかくこれで現場初期の重要人物が出揃ったところで一段落。実はこの人たちはすべて初対面の方ばかり。いつものことではないが、よくもそんなことができると思われるだろう。実際そうなっているのだからきちっと説明しなければならないが、出会いというものは偶然でもないし、求めてできるものでもないと思う。いつもの馴れた人たちとばかり付き合っているなら、地場の工務店もどきでしかない。やはり毎回緊張感をもって現場に当たっていくしかないように思う。大会毎やシーズンごとに感じるスポーツ選手の緊張感のようなものが、現場の管理にも必要であるような気がする。日本各地現場をまわっているが、やはり同じ勤勉な日本人であることは共通だし、とくに地方は地方で古きよき感覚が残っているように思える。たとえ初対面でもよくわかる。

さて基礎のほうだが、遣方工事から始まる。丁張りは本来大工工事だったが、今は大方基礎工事に組み込まれていることが多い。親方によると、他人の丁張りは信用しないとのこと、たぶん過去に上物と合わなかったことがあるのだろう。遣方工事と同時に敷地内進入路づくり。道路と敷地にかなりの段差があり、ちょうどガレージとなるところを、予め上部地面までなだらかなスロープとしたいということ。ガレージの掘削本工事は後でもいいのではないかとの説明。となるとその際施主懸案の擁壁が可能となるかもしれない。

いよいよ掘り方。小さな軽ダンプで敷地内に入ってユンボからの土を受け取り、スロープ途中まできた大型ダンプに移し変えて場外搬出と、なかなか狭い敷地の中にあって芸が細かい。こういう搬出方法は初めて。ガレージのあたりは砂土状の地質だったが、本体基礎部分は地盤調査どおり25センチくらいから硬い地盤にあたった。硬いといっても岩盤ではなく、粘土の固まったような地質で、粘板岩の3歩手前のような感じ。何度も引っかきながら掘っていく。地盤がよいのでその部分は砕石敷き省略して捨てコンも薄くてかまわないと判断。敷地は平坦だが、道路との段差、また道路勾配もある。設計時は南側マイナス750北側、マイナス1600で認識していたが、今回のレベル測定ではトランシットを使用。南側マイナス930、北側マイナス1430。たぶん設計時は斜面上部の畝の部分を地盤面としていたようで、結果的にはより都合よい数値となってきた。平面に関しては「北側東西のポイントが境界塀のブロックより30ミリほど内側なので留意して位置出しする」と言ういぶし銀。「オーケーです。よろしくお願いします」。

事務所Nさんに「基礎伏図最終、昨夕18時25分の添付ファイル、社長さんに渡した。変更箇所はポーチ前、キッチン束石並び、浴室基礎ですね」と確認取ったら、「浴室基礎動いてません」だって。事務所Tさんは修正していないとのことで、急遽電話。「何故土台動かして基礎動かさないの?」「間に合わないと思いました」「そんなことない。これから掘り方だから」。まだまだ任せるわけにはいきません・・・。いぶし銀に「先ほど渡した図面ちょっとかえしてください。変更箇所ありますので」といって、「赤ペンで浴室布基礎7通りから南へ90ミリ移動寸法書き入れました。これでお願いします。」「はいはい。」「それから玄関前のスプレーのラインですが、ここはブロックでしますから基礎でなく、東側のニ通りが基礎となります。前回変更したので、すいません。」ということで基礎全体配置はこれで確認終了。あとは掘り方進めていただくだけである。

11時前に、車を飛ばして15分、最寄り駅のHs駅前の月極駐車場の最終確認へ。一般に現場管理の交通手段はその現場の遠方度によって変わる。今回の現場は事務所から準遠方のため、駅前に駐車場を確保、往復は電車利用のパターンとする。先の日曜日、施主と同行して近隣挨拶に行ってくれた事務所Tさんが、帰り際に予め調査してくれていたもの。いわれていた通りのガレージで決定。踏み切りを何度も通ったり幹線道路に出にくい他のガレージ、駅に近いからといって必ずしもOKとはならない事例だった。
(つづく)

再訪記-09Y邸

竣工後1年ぶりに遠方で建てた09Y邸に伺った。今度の現場で使用を予定している瓦が窯変瓦の在庫品であるため遠方での製品検査が必要となった。旅先の途中を通るので立ち寄らせてくださいとお願いした。前日の打ち合わせ場所から夕方到着し、工事の最中にお世話になった馴染みの宿に一泊。翌朝7時過ぎには現地着。まずは周囲を一回り、約束の8時ちょうどに、おはようございます。奥さんが赤ちゃんを卒業したお子さんと笑顔で出迎えてくれた。ご主人が住んでからも塗られたようで柱、梁の柿渋がずいぶんと落ち着いた様子をかもし出している。生活雑貨なども選ばれたものがさりげなく置かれて、この1年の間でシーダ・バーンでの暮らしぶりが板についた様子は嬉しい。少し前に今年の夏は暑く、2階の四畳半にクーラーを入れたいとお電話があったので、どうなったのかと思いのぞいてみた。その4畳半はダイニングキッチンのすぐ裏手にもかかわらず小屋裏になるので当初、予備室として設計した部屋である。それが何と寝室として使われていることにびっくりした。寝室は階上の大屋根下の8帖の小屋裏としていたはず。設計どおり最初の生活パターンが定着していくとは限らないが、少し戸惑った。しかし私の家もキッチンの隣、渡り廊下を介してはいるが寝室にしているので、キッチンと寝室と便所の3部屋が隣り合っている生活の心地よさはよく分かる。

寝室からキッチンをみる
09Yさんご夫婦にはじめて出会ったころのことを思い出す。案内されたのは中央に2メートルの段差がある北斜面の敷地である。高いほうが南で隣地はさらに高く2階建てでも間近に迫ってきている。たぶん低いほうにガレージを、高いほうに家を建てましょうという心積もりでの造成なんだろうが。設計者にとっては、周りには平らな敷地があるのに、わざわざこの形状のものを選んで、一苦労するなという予感でいっぱい。聞いてみると、少しでも安い土地を購入することで予算を建築費に回したいと言われる。そういわれても嬉しいやら悲しいやら。その後ひと頑張りして設計を終えて段差をもった家が出現。南庭も結構広いし陽当たりも十分。自己評価としてもなかなかユニークな家ができたと喜んでいた。でもこの暮らしぶりは予想を超えていた。キッチンの隣なのに、何と屋根裏風の寝室で家族3人で寝ている様子はまさにイギリスのB&Bに泊まっているような良い雰囲気。この家にしかあり得ない暮らし方は誰の設計でもどのアイデアでもない。きっと神様からの贈り物、シンプルギフト、だったのでしょう。