シーダ・バーンのブログへようこそ。
これから家を建てようと思う人に伝えたい建築家の日々の仕事ぶりを綴っています。
学生さん、社会人の方々にも参考になれば幸いです。
なお、当ブログでは、人物、場所、日時等が特定できるような表現を控えています。



現場速報-10Y邸1日目午前、基礎工事

基礎工事初日、いわゆる着工当日。8時20分現場着。事務所から古アルト。夏真っ盛りの今朝、敷地前の道幅が広く街路樹もないため、かんかん照り状態。高台で風のあることが救いだが、日中は暑さをしのぎ日陰を求めて車移動しなければならないので思いやられる。

すでに基礎工事屋さんが現場作業にかかっている。一般的に全国各地、工事の時間は朝八時から夕方五時(午後六時の場合もたまにあるが)と決まっているようだ。北は宮城、南は島根まで行ったが日の出と日没時間が変わるだけで、同じ日本である。オフィス通いや店舗詰めの方とは時間帯の感覚が違っているのは、建築現場が日照時間の平均にあわせているだけでなく、きりがいいからだろう。12時から13時までの昼休みと10時、15時の小休憩挟んで、2時間ローテーション4回というきわめて明快な働き方なのだ。8時工場、工事、9時オフィス、10時店舗という時間差が都会の朝の通勤すみわけを可能としているのかもしれないが。

基礎工事屋さん、親方60代風。以下、頭領風といぶし銀風50代の3人。少しして設備屋さん来場。赤ターバンした30代風1人、親方の説明によると仕事のあいているときは応援部員となって働くそうで、設備会社の一人親方のようだ。仕事が重なる部分もあるので、合理的起用法といえなくない。設備の打ち合わせとしては、盆明け先行配管、北側法面200程度の部分はあとでブロック1段分土盛り。雨水排水経路変更、スケッチあり。分担金等金額決定につき立替依頼。詳細別紙あり等々。さらに9時前電気屋さん、60代エルダー風。電気盤の位置など話す最中、まだ機種を探しているとのこと、計器窓が少ないものを。仮設電気すぐ申請すれば盆前に電力会社来てくれそうとのこと。本設も仮申請しておくので、正式書類に印鑑ついておくようにと説明。そうこうするうちに、3メートルほどの仮設ポール1人で運んできて、土つまみで穴掘りして、電柱立ててしまった。こちらも親方に違いないが、手下なしでちょっと驚きである。

とにかくこれで現場初期の重要人物が出揃ったところで一段落。実はこの人たちはすべて初対面の方ばかり。いつものことではないが、よくもそんなことができると思われるだろう。実際そうなっているのだからきちっと説明しなければならないが、出会いというものは偶然でもないし、求めてできるものでもないと思う。いつもの馴れた人たちとばかり付き合っているなら、地場の工務店もどきでしかない。やはり毎回緊張感をもって現場に当たっていくしかないように思う。大会毎やシーズンごとに感じるスポーツ選手の緊張感のようなものが、現場の管理にも必要であるような気がする。日本各地現場をまわっているが、やはり同じ勤勉な日本人であることは共通だし、とくに地方は地方で古きよき感覚が残っているように思える。たとえ初対面でもよくわかる。

さて基礎のほうだが、遣方工事から始まる。丁張りは本来大工工事だったが、今は大方基礎工事に組み込まれていることが多い。親方によると、他人の丁張りは信用しないとのこと、たぶん過去に上物と合わなかったことがあるのだろう。遣方工事と同時に敷地内進入路づくり。道路と敷地にかなりの段差があり、ちょうどガレージとなるところを、予め上部地面までなだらかなスロープとしたいということ。ガレージの掘削本工事は後でもいいのではないかとの説明。となるとその際施主懸案の擁壁が可能となるかもしれない。

いよいよ掘り方。小さな軽ダンプで敷地内に入ってユンボからの土を受け取り、スロープ途中まできた大型ダンプに移し変えて場外搬出と、なかなか狭い敷地の中にあって芸が細かい。こういう搬出方法は初めて。ガレージのあたりは砂土状の地質だったが、本体基礎部分は地盤調査どおり25センチくらいから硬い地盤にあたった。硬いといっても岩盤ではなく、粘土の固まったような地質で、粘板岩の3歩手前のような感じ。何度も引っかきながら掘っていく。地盤がよいのでその部分は砕石敷き省略して捨てコンも薄くてかまわないと判断。敷地は平坦だが、道路との段差、また道路勾配もある。設計時は南側マイナス750北側、マイナス1600で認識していたが、今回のレベル測定ではトランシットを使用。南側マイナス930、北側マイナス1430。たぶん設計時は斜面上部の畝の部分を地盤面としていたようで、結果的にはより都合よい数値となってきた。平面に関しては「北側東西のポイントが境界塀のブロックより30ミリほど内側なので留意して位置出しする」と言ういぶし銀。「オーケーです。よろしくお願いします」。

事務所Nさんに「基礎伏図最終、昨夕18時25分の添付ファイル、社長さんに渡した。変更箇所はポーチ前、キッチン束石並び、浴室基礎ですね」と確認取ったら、「浴室基礎動いてません」だって。事務所Tさんは修正していないとのことで、急遽電話。「何故土台動かして基礎動かさないの?」「間に合わないと思いました」「そんなことない。これから掘り方だから」。まだまだ任せるわけにはいきません・・・。いぶし銀に「先ほど渡した図面ちょっとかえしてください。変更箇所ありますので」といって、「赤ペンで浴室布基礎7通りから南へ90ミリ移動寸法書き入れました。これでお願いします。」「はいはい。」「それから玄関前のスプレーのラインですが、ここはブロックでしますから基礎でなく、東側のニ通りが基礎となります。前回変更したので、すいません。」ということで基礎全体配置はこれで確認終了。あとは掘り方進めていただくだけである。

11時前に、車を飛ばして15分、最寄り駅のHs駅前の月極駐車場の最終確認へ。一般に現場管理の交通手段はその現場の遠方度によって変わる。今回の現場は事務所から準遠方のため、駅前に駐車場を確保、往復は電車利用のパターンとする。先の日曜日、施主と同行して近隣挨拶に行ってくれた事務所Tさんが、帰り際に予め調査してくれていたもの。いわれていた通りのガレージで決定。踏み切りを何度も通ったり幹線道路に出にくい他のガレージ、駅に近いからといって必ずしもOKとはならない事例だった。
(つづく)